某エフェクターメーカーによると、「修理依頼で届くエフェクターの約半数は異常がなく、トラブルの原因は他の機材」だそうです。
音が出ない等いろいろな理由で修理に送られてきたエフェクターが100台あったら、50台は何の不具合もないというのは大変な話です。
このような不要な修理依頼はプレイヤー自身にとっても無駄足ですので、今回はエフェクターに関するトラブルシューティングについて、修理に出す前に確認すべきことをまとめてみます。
何から確認すべきかを明確にする
「スタジオ等でセッティングを終え、アンプの電源を入れ、楽器のボリュームを上げて弾いてみると、なぜか音が出ない、エフェクターの電源がつかない、あるいはやたらとノイズが出るなどといったトラブルが発生した。」
こういう場合の対処法としては、簡単に調べられるところから順にチェックするというのがセオリーです。
適切な順番で確認作業を進めることで、より短時間で原因を突き止めることができます。
逆に、あとから確認すべき部分を先に見始めてしまうと、問題の解消には遠回りとなりかねません。
即座に確認できるもの、そして楽器からアンプまでのルート上で大きな影響を及ぼすものを優先的に確認していきましょう。
ポケットの中やアンプの上にスマホがないか?
まず、機材そのものには何の問題もないパターンです。
「いつもはこんなことないのに今日は凄いノイズが出る!」と思ったら、楽器からアンプまでの信号ラインのすぐ近くに強い電波を発生させるものが置いてあったというオチは珍しくありません。
最近は少ないかもしれませんが、過去に実際に遭遇したのが、スマホがノイズ源だったパターンです。
特にアクティブのベースで、内蔵のオンボードプリアンプが電波の影響に弱かったり、シールディングが不十分だったりすると、ポケットに入れたスマホの影響を受けることがありました。
スマホはカバンにでもしまって、少し離れたところに置いておきましょう。
余談ですが、「家で弾くときだけノイズが出る」という場合には、パソコンやテレビが原因だったりもするようです。
プラグがしっかりささっているか?
楽器からアンプまでの間にエフェクターの数が多いほど、それらを接続するシールドケーブル・パッチケーブルの数も多くなります。
きっちり組み込んだエフェクターボードでも、なぜかプラグが抜けかかっていたり、しっかり奥まで入っていなかったりすることがあるので、全てのプラグをきっちり手で押し込んでみましょう。
パワーサプライとエフェクターを繋ぐ電源供給のDCケーブルも、パワーサプライ側・エフェクター側ともしっかり挿し込まれているか確認しましょう。
なお、目に見える部分を色々確認したつもりでも、何年やっていても「楽器本体やアンプのジャックにシールドのプラグがしっかりささっていなかった」という超うっかりパターンをゼロにはできないものです。
そして、これらをチェックしてトラブルが解決しないなら、楽器からアンプまでの機材のどこかに実際に問題があるということです。
シールドケーブルに問題がないか?
エフェクター周りは一旦置いといて、楽器とアンプを繋ぐ長いシールドが生きているか確認します。
エフェクターを持ち歩いているのであれば、「楽器からエフェクターまで」と「エフェクターからアンプまで」の2本、長いシールドがありますね。
このシールドが断線していないかは、エフェクターを通さず、楽器とアンプをシールド1本だけ(いわゆるアンプ直)で繋ぐことで確認できます。
1本はちゃんと音が出るが、もう1本はトラブルが発生する場合
片方のシールドに問題があるだけなので、別のシールドに替えてみましょう。
2本ともトラブルが発生する場合
「この前まで使えていたシールドが急に2本ともダメになった」とは考えにくいので、検証のためにバンドメンバーやスタジオに元気なシールドを1本貸してもらいましょう。
それでもなお、確実に無問題なシールドでアンプ直なのにトラブルが発生する場合は、楽器本体かアンプのどちらかに原因があります。
2本ともちゃんと音が出る場合
シールドにもアンプにも、楽器本体にも問題がないことが分かります。
となると、この場合はエフェクターボードのどこかにトラブルの原因がある可能性が高いです。
※ケーブルテスターを持っておこう
シールドやパッチケーブルが断線等していないかのチェックには、ケーブルテスター(ケーブルチェッカー)があると便利です。
今販売されているものだとD'AddarioのPW-DIYCT-01がオススメで、自作シールドやソルダーレスケーブルを作るときにも便利ですし、DCケーブルのチェック機能も備えています。
安いのでお守りとして何かのついでにでも買っておきましょう。
楽器本体やアンプに問題はないか?
ギターならばスタジオに2台アンプがあることも多いので、アンプが故障していないかの検証はしやすいですが、ベースの場合はそうもいかないので、スタジオの空き部屋があればスタッフの方に頼んで検証させてもらいましょう。
「トラブルの原因がアンプなのか自分の楽器なのか分からない」と伝えれば協力してもらえると思います。
別々のアンプにアンプ直で繋いでみて、片方のアンプだけでトラブルが発生したなら、それはアンプ側の問題と考えていいでしょう。
ですが、シールドに問題がない・かつアンプ直なのに、アンプ2台ともで同じトラブルが起こるなら、それは自分の楽器本体に異常が発生したと判断せざるをえません。
(※プリアンプを内蔵したアクティブの楽器の場合は単に電池切れの可能性もあるので、新しい電池に交換して様子を見ましょう。)
エフェクターボードの中に原因があった場合の対処
ここまでの流れで、「シールド」「アンプ」「楽器本体」のいずれにも不具合がないと確認できたとします。
この時点で初めてエフェクターボードの中にトラブルの原因を疑うことになります。
ただ、短時間のスタジオ練習やライブハウスでのリハーサル等、時間がない中ではそこまでの検証はあきらめるしかないこともあります。
状況によってはバンドメンバーや対バンの共演者に迷惑をかけないよう、ボード内の問題点探しはあきらめてアンプ直、もしくはチューナー等の最低限のものだけ繋いで演奏する、という妥協をするしかありません。
そのうえで、後日改めてエフェクターボードの中をチェックしましょう。
電池駆動のエフェクターの電池が切れていないか?
電池切れは、エフェクターの電源が入らない原因の代表例です。
基本中の基本ではあるのですが、基本すぎて意外と見落としがちな部分です。
冒頭の話ですが、「初期不良で音が出ない」と購入者がメーカーに送ってきたエフェクターが電池切れなだけだったという話も珍しくないようです。
OFF時に信号が内部の回路を通らないトゥルーバイパスのエフェクターが電池切れになると、エフェクトOFFのときはドライ音が鳴る一方で、ONにすると全く音が出なくなってしまいます。
これは知識として知ってはいても、初めて体験すると焦ってしまう現象です。
また、スイッチャー等を使わずに全てのエフェクターを直列に繋いでいる場合、BOSS等のバッファードバイパス(電源OFF時にも内部の回路を通った音が出る=電池が切れるとON/OFF問わず音が出なくなる)のエフェクター1台が電池切れになるだけで足元のシステム全体の音が出ないという事態を招きますので、初心者のうちはかなり慌ててしまうのではないかと思います。
全てのエフェクターをアダプターやパワーサプライで駆動しているならいいですが、電池駆動のエフェクターがあるなら定期的に電池を交換する必要があります。
なお、電池を入れたエフェクターは、シールドが挿さったままの状態(すなわち「ボードに組み込んだ」状態)だとエフェクトOFFでも主電源が入ったままになるので、何もしなくても電池残量が消耗していきます。
電池駆動のエフェクターでボードを組むなら、使わないときはパッチケーブルを抜く等の一手間が必要になります。
ちなみに、エフェクターの電池残量を計測するのに便利なバッテリーチェッカーもあります。
使っている人を見てすごく良いなと思ったのがLimetone AudioのBC CUBEです。
別途電源は必要なく、小さいので持ち運びにも便利です。
電池派の方やアクティブベースを使用されている方は、このようなバッテリーチェッカーが必須だと思います。
パワーサプライ/アダプターの規格は合っているか?
最近のエフェクターは、ほどんどがDC9Vセンターマイナスという規格のアダプターやパワーサプライで駆動します。
このために使うのが、どの楽器店でも売られているAC-DCのアダプターやパワーサプライです。
これにより、コンセントから出てくるAC(交流)を、DC(直流)に変換してエフェクターを動かします。
ただ、DC9Vセンターマイナスでは動かせないエフェクターも存在します。
分かりやすいのは、DC18Vなどの高い電圧が必要なエフェクターです。
問題なのが、第4世代以前のワーミーなどといった古いエフェクターにAC9V(DC9Vではない)で動くものがあるという点です。
この場合、AC-DCアダプターではなく、AC-ACアダプターが必要になります。
(AC-DCアダプターもAC-ACアダプターもなぜか両方「ACアダプター」と略されていたりするので注意が必要)
そのほか、同じDC9Vでも、センターマイナスではなくセンタープラスという仕様のエフェクターも存在します。
これらのエフェクターについては、他のエフェクターと同じパワーサプライから電源を取れないのであれば、そのエフェクターだけは個別に専用のアダプターから電源を取る等の対策が必要な場合があります。
エフェクターボードを全バラシして確認する
ここまでやっても不具合の原因が分からないなら、全てのエフェクターを個別にチェックするしかありません。
面倒でも、エフェクターボードを一度解体し、エフェクターを1台ずつ繋いでチェックします。
その際、ついでにエフェクターのジャックのナットがゆるんでいないか、またパッチケーブルのプラグ部分がゆるんでいないか確認し、きっちり締め直しましょう。
・エフェクターを1台ずつ繋いだときは問題なく音が出るか?
・パッチケーブルが断線していないか?
・アダプターの故障、もしくはパワーサプライとエフェクターを繋ぐDCケーブルが断線していないか?
パワーサプライに異常がないように思えても、特定の出力端子だけが故障していることもありえます。
ソルダーレスケーブルを使用しているなら、一度分解してケーブルの端を切り落とし、再度作り直す必要が出てくる場合もあるでしょう。
また、「エフェクターも電源もパッチケーブルも全部問題ないのに、ボードを組み直したらやっぱり音が出ない!」というときに、ジャンクションボックスの確認が漏れていたというケースもあるので、音声信号ライン上にあるものは全て確認しましょう。
エフェクターの故障には色々なパターンがあり、内部パーツの不良で音が出なくなる以外にも、「電池を入れても電源が入らないけどアダプターを繋ぐと動く(=バッテリースナップの不良)」、逆に「アダプター駆動できないけど電池なら動く(=DCジャックの不良)」などがありえますが、楽器店やメーカーに修理に持ち込む前に、自分である程度原因を特定できるようになっておくのはプレイヤーとして重要なことだと思います。
「音が出ないんです」と楽器店にエフェクターを持ち込んだときに、店員さんのチェックで「普通に出ますが…」となるのは恥ずかしいものです。
接続する機材が増えるほど、予期せぬトラブルに遭遇する可能性は高くなります。
そんなときに落ち着いて対処できるよう、普段からエフェクターボードの状態を気にしておくことをおすすめします。
最後に、エフェクターが壊れる理由としてよくある原因を一つ紹介しておきます。
「音が良くなる」などという不確かな情報に乗せられて、9V仕様のエフェクターに18V等の高電圧のアダプターを繋ぐことです。
エフェクターの高電圧駆動については別記事で書いていますが、故障を招くというデメリットを理解したうえで自己責任で試すようにしてください。


