長年ピアノを弾く機会がなくなっていた妻が、電子ピアノ演奏動画のYouTube投稿を始めました。
私はその手の活動に必要な機材について全く知識が無かったのですが、色々調べて「最低限これだけ揃えればそれなりの高音質で演奏動画が撮れる機材一式」を購入しました。
比較的シンプルかつコストパフォーマンスの高い環境が構築できたと思うので、動画撮影のやり方が全く分からない方向けに、必要機材や接続方法についてまとめておきます。
本記事で紹介したYAMAHAのミキサー「AG03」は旧製品となり、2022年より後継機種の「AG03MK2」が販売されています。
新しい方のAG03MK2は配信者向け機能が強化されましたが、「電子ピアノの演奏動画をiPhoneで撮影する」という用途であれば大きな変更点はなく、旧型でもMK2でも基本的なやり方は変わりません。
ケーブルの違い等がある部分には注意点を記載しています。
スマホだけで動画撮影するのがダメな理由
そもそも、電子ピアノに限らず、演奏動画の投稿はシンプルに済ませようと思えばすぐにできます。
演奏をスマホで動画撮影すればいいだけです。
しかし、それには「不要な音まで拾ってしまう」という大きな欠点があります。
実例として、これは「思い立ったが吉日」とばかりに妻がパジャマのままでiPhoneで普通に撮影した一番最初の動画です。
近所迷惑にならないよう、電子ピアノのスピーカーから出す音量を小さめにして撮影した結果、ゴトゴトという打鍵音が思いっきり入っているのが分かります。
このように、住宅事情に配慮して小音量で楽器を録音しようとすると、「本来なら入ってほしくない動作音」が問題になります。
例えば電子ドラムの演奏動画を撮るのに、パッドをパタパタと叩く実音ばかりが録音されては意味がありません。
エレキギターやベースでも、アンプから出る音だけ録音したいのにカシャカシャと弦をはじく生音が入ってしうことがあります。
演奏動作による音だけでなく、家族の生活音や近所を走るパトカーのサイレンなども演奏録音には邪魔です。
では、自宅での撮影において、この「電子ピアノ以外の音が入ってしまう」という事態を避けるにはどうすればいいのか?
この問題の解決には、電子ピアノのスピーカーから音を出して演奏する様子をそのままスマホのカメラで録るのではなく、電子ピアノとスマホを接続して音声信号だけを綺麗に録音する「ライン録り」が必須となります。
「なるべくシンプルかつ簡単に」をテーマにそろえた機材
今回は、このライン録音ができる環境を「スマホを活用した最小限の機材で」「なるべく安く」構築することを目指しました。
以下、実際に購入したものを紹介していきます。

YAMAHA AG03(ミキサー)
今回メインとなるのが「ミキサー」という機材です。
電子ピアノのヘッドホンアウトから出てくる音声信号を直接iPhoneに突っ込むことはできないので、電子ピアノとiPhoneの間にこのミキサーが必要です。
購入したのはYAMAHAのAG03です。
機械が苦手な人だと「えー、なんかややこしそう…高いし…」と感じるかもしれません。
しかしこのAG03は、楽器演奏に限らない動画配信者のためのツールとしてもかなり人気の高い、まさに超定番のミキサーです。
値段も比較的安い方ですし、何よりユーザーが多い定番機種を買うことは「初心者で分からないことがあってもネットで調べれば大体の疑問が解決できる」という大きなメリットになるので、最初の1台としておすすめです。
インサーションケーブル
YAMAHA AG03の箱に入っている付属品のケーブル類は、AG03とパソコンを繋ぐためのUSBケーブル1本だけです。
しかし、iPhoneでの動画撮影にはこの付属ケーブル以外にもいくつか接続用のケーブルが必要で、別に用意しなければなりません。
まずは、電子ピアノとAG03を繋ぐケーブルです。
電子ピアノのヘッドホン端子から出てきた音をAG03に送るには、「インサーションケーブル(インサートケーブル)」と呼ばれるY字型の二股ケーブルを使います。
ステレオの音声信号をモノラルのLR(要はイヤホンの左右)に分岐させるケーブルです。
長さには少し余裕がある方がいいので、私は「1mで足りそうだな」と思いつつ、念のため2mのものを買いました。
Lightning-USB 3カメラアダプタ
次に、電子ピアノのヘッドホン端子から出てYAMAHA AG03まで届いた音声信号をiPhoneに送るために、AG03とiPhoneを繋がなければいけません。
ここでは、AG03に付属しているUSBケーブルの先端をLightning端子に変換し、かつ電源供給しながら撮影できる「Lightning-USB 3カメラアダプタ」を使います。
このように、USBの端子とLightningの端子が並んでいるタイプのものです。

そのため、結局あとからApple製の純正品に買い替えるはめになりました。
以後、同様のトラブルは発生していません。
Appleの純正品は正直高いですが、無駄な出費を減らすためにもケチらずに最初から本物のApple製品を買った方が絶対いいです。パチモンとか個人売買の中古品は買うな!
Lightningケーブル
上記のLightning-USB 3カメラアダプタを介してiPhoneに電源供給するためには、別途Lightningケーブルが必要です。
普段充電用に使っているLightningケーブルがあるとしても、撮影のたびに挿し替えるのは面倒です。
予備を持っていないのであれば、長さに余裕のあるケーブルを1本買っておきましょう。
USBケーブル(Android充電ケーブル)
YAMAHA AG03は電池やバッテリーで動くわけではありません。
AG03をパソコンと接続する場合には「バスパワー」といってパソコンから電源をお裾分けしてもらうことができるのですが、iPhoneと接続するのであれば、AG03を動かすための電源アダプターが別途必要になります。
このために必要になるのがmicro USBケーブル、要は一世代前のAndroidスマホの充電ケーブルです。

今時そんなに売れないのでしょうか、ネットでだいぶ安く買えます。
旧製品ではなく現行のMK2であれば、このケーブルがUSB Type-C、すなわちAndroidスマホ用として現在主流のケーブルになります。旧型AG03と現行のAG03MK2でケーブルが違うのはここだけです。
USB ACアダプター(スマホ用充電器)
Lightningケーブルとmicro USBケーブルをそれぞれコンセントに繋ぐためのACアダプターも当然必要になります。
ちょうどUSBポートが2つあるタイプのものが余っていたので、今回はこれを使うことにしました。

コンセントが遠いのであれば延長コード(電源タップ)も用意しましょう。
ヘッドホン
AG03を経由してiPhoneに送られる音を聴く(モニタリングする)ためのヘッドホンも必要です。
何でもいいのですが、これを機に買いたいという方には、比較的安い中であれば個人的にAKGをおすすめしたいです。
特にこちらは圧迫感が少なく演奏の邪魔にならない開放型のヘッドホンで、合皮ではない布地のイヤーパッドが最初から付属しているのが非常に良いと思いました。
スマホ用三脚
絶対に必要というわけではないですが、電子ピアノの上にiPhoneを置いて撮影するとどうしても撮影角度の調整幅が不十分なのと、振動で揺れることもあるため、スマホ用の三脚を購入しました。
それなりに足がしっかりしたものであれば、基本的にはAmazonの安物でも十分です。
ただ、床に置いてピアノの演奏を横ないし斜め上から撮影するなら最低でも高さが100cm以上、できれば130cmぐらいまで伸ばせるものがいいと思います。
各機材の接続方法
では、電子ピアノとYAMAHA AG03、そしてiPhoneの接続について、とにかく分かりやすいよう使わない機能には一切触れずに説明します。
なお、上で紹介した順に番号を振っていますが、どの順番で繋いでも問題ありません。
①電子ピアノ→インサーションケーブル→YAMAHA AG03
電子ピアノのヘッドホン端子に、インサーションケーブルの分岐していない方のプラグを繋ぎます。

そして二股に分かれた方のプラグをAG03へ。
ピアノの絵が描いてある下の2つのジャックに繋ぎます。
一般的に白い方がL、赤い方がRです。

このとき、LINE/GUITAR切り替えスイッチは出っ張った状態(LINEモード)にしてください。
描いてあるイラストの通り、このスイッチを押し込む(GUITARモード)のはギターを繋ぐときです。
また、GAINスイッチの方も出っ張った状態(HIGH)にしておきます。

②YAMAHA AG03→付属USBケーブル→Lightning-USB 3カメラアダプタ
AG03の背面のUSB2.0端子に付属品のUSBケーブルを繋ぎます。

このUSBケーブルの反対側はACアダプター(コンセント)には繋ぎませんよ!
これはiPhoneに音声信号を送るためのものなので、このUSBケーブルの先端にLightning-USB 3カメラアダプタを接続しておきます。

③電源アダプター
次が、コンセントからAG03の電源をとるための配線です。
別途購入したmicro USBケーブルとLightningケーブルを、ACアダプターを介してコンセントに挿します。
(もちろん、それぞれのケーブルに繋ぐアダプターは別々のものでもかまいません)

コンセントに繋いだmicro USBケーブルの方は、AG03背面の5V DC端子に繋ぎます。
これでAG03の電源が入るようになります。

そして、コンセントに繋いだLightningケーブルの方は、先ほどのLightning-USB 3カメラアダプタに繋ぎます。
これでiPhoneを充電しながら撮影ができます。

④Lightning-USB 3カメラアダプタ→iPhone
最後に、三脚に固定したiPhoneに、Lightning-USB 3カメラアダプタを接続します。
これで電子ピアノからiPhoneまでの接続は完了です。
なお、三脚を使う場合、マジックテープ式の結束バンドなどを使ってこのように固定しておくとケーブル抜け落ち防止になります。

⑤ヘッドホン
電子ピアノの音を自分で聞くためのヘッドホンは、AG03のヘッドホン端子に接続します。
なお、この端子は標準プラグ(大きいサイズのプラグ)を繋ぐ用です。

「ミニプラグ(小さいサイズのプラグ)のイヤホン/ヘッドホンしか持っていない」という場合は、こちらのヘッドセット用となっているヘッドホン端子に繋いでもOKです。

音が聞こえるか確認
ではいよいよ音出し確認です。
ケーブル類の接続がすべて完了したら、電子ピアノとYAMAHA AG03の電源を入れ、以下の音量調整を行います。
AG03の電源ボタンはオンにすると光ります。

①電子ピアノの音量を決める
本来なら楽器録音時のレベル調整には色々ポイントがあるのですが、ここでは分かりやすさを重視し、なるべく楽に済ませる手順でいきます。
ひとまず、電子ピアノのボリュームは普通にヘッドホンを繋いで演奏するときの位置をスタート地点としましょう。
②YAMAHA AG03側のレベル調整
ここからが「iPhone側で最終的に録音される音の大きさ」を決める重要な工程です。
鍵盤を適当に弾きながら、ピアノの絵が描いてあるつまみ(レベルつまみ)を上げていきましょう。

この時点ではまだヘッドホンから音が聞こえない(※ヘッドホンの音量調整は次の③を参照)ですが、電源ボタン下の緑のランプ(SIG)が演奏に反応して光っていれば、電子ピアノの音はちゃんとAG03に届いています。

最大音量が出るよう「ガーン!」と思いっきり弾いたときに、赤いランプ(PEAK)が一瞬光ってすぐ消えるぐらいが適正な入力レベルです。
赤がピカーッと光りっぱなしになっていたら、それはレベルつまみを上げすぎです。音割れしてしまうのでレベルを下げましょう。

ちなみに参考までにですが、うちの電子ピアノ本体の音量が先に書いた「普段弾くときの位置」であった場合、AG03のレベルつまみは全開でちょうどいいぐらいのレベルになります。
「AG03のレベルつまみを全開まで上げても赤ランプが全くつかない」という場合は、電子ピアノ本体側の音量が小さすぎると考えられるので、電子ピアノ本体の音量を上げてみましょう。
逆に「レベルつまみや電子ピアノ本体の音量を小さくしても赤ランプがつきっぱなしになってしまう」という状態であれば、「接続方法」の①で登場したGAINスイッチを出っ張った状態(HIGH)ではなく押し込んだ状態(LOW)にすることで、入力レベルを小さくして音割れを防ぐことができます。
③ヘッドホンから聞こえる音量の調整
先の②を完了した時点でiPhoneで録音するための最終的な音量決めは既に確定しているので、もう電子ピアノ本体の音量やAG03のレベルつまみは触りません。
そのうえで、ヘッドホンで自分の演奏している音を聞く(モニターする)音量を、録音音量とは別に調整します。
ヘッドホンに送られる音量は、右下のMONITORセクションのヘッドホンつまみで調整します。

これは純粋に「ヘッドホンから聞こえる音の大きさ」の調整であり、iPhoneに送られる音には影響しないので、ここで自分が演奏しやすい音量に設定すればOKです。
繰り返しますが、「適切な音量レベルで録音されるか(②)」と「自分の耳で聴く音が大きいか小さいか(③)」は別々の調整であることに注意しましょう。
ライン録り動画撮影の結果
ではいよいよ撮影です。
ここまでの準備がミスなく完了していれば、iPhoneの通常のカメラアプリで普通に動画撮影するだけで、YAMAHA AG03を経由した明瞭な電子ピアノの音が映像とともにライン録音され、外部環境の不要な音は入りません。
というわけでこちらがAG03導入後の動画です。
最初のゴトゴトうるさい動画とは音質が雲泥の差です。
余談ですが、AG03の上に乗っているのは、学生だった頃に妻にプレゼントしたCLANNADのだんご大家族です。
RPGのザコ敵ではありません。
というわけで無事に「弾いてみた」動画の録画環境を整えることができました。
少しでも参考になれば幸いです。

