クラウドワークスの月30万円稼げる案件はマルチ商法「ワールドベンチャーズ」の勧誘だった

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私は勤めていた会社を退職することになった後、アルバイトをしつつ、並行して長期的に続けられる在宅の仕事探しをしていました。
しかし、単発ではない継続案件となると数も少なく、なかなかよさそうなものが見つかりません。
そんなある日、クラウドワークスのメッセージに、「採用担当募集!完全在宅☆マニュアル完備◎コツコツ作業を続けられる方大歓迎」という仕事のオファーが届きました。

クラウドワークスで案件に応募

届いたメッセージの内容を見てみると、仕事の種類は「人事・給与計算」のカテゴリーになっており、詳細欄にはこんなことが書いてありました。

・仕事内容は、こちらで準備している募集文を、指定したサイト等にコピペで求人掲載するという作業です。
・好きな時間に作業でき、空いた時間を有効活用できます。
月30万円以上稼ぐことも可能です。

こんなもん、冷静に考えたら明らかに怪しいです。
しかし、仕事が見つからない焦りもあり、私はこの仕事の応募ボタンをクリック。
興味がある旨を募集元のクライアントさんに返信しました。

すると、こんなメッセージが返ってきました。
(※以下、画像の一部加工・下線・赤字は筆者による)

世界20ヶ国以上のネットビジネスコミュニティ??
LINEでの事業説明会???

「何かおかしいな」とは思いつつも、私はLINE通話を使った説明会とやらに参加してみることにしました。
そこで一番下のURLをクリックしてみると、「アンケート」と称した申し込みフォームが。
クラウドワークスでのアカウント名だけでなく、本名やメールアドレス、住んでいる都道府県、LINE ID等、ほぼ全てが必須項目でしたが、やむなく記入して送信しました。

するとその後、クライアントのS氏からLINEにメッセージが届きました。
(S氏のLINEアイコンは女性で、子供の写真も載っていました。このへんの話は最後にまた)
調整の結果、2日後の15時からの枠でオンライン説明会に参加することになりました。

LINE通話での説明会

説明会当日、私は「事業説明会 12月27日15時~」というLINEグループに招待されました。
LINEグループの参加者は15人程度で、時間になるとグループ通話がスタートしました。

ですが、実際にグループ通話に入ってきたのは、S氏や説明担当のK氏(こちらも女性)を含めても6人だけ。
他の人は様子がおかしいことを警戒し、通話に参加しなかったのかもしれません。

そう。この説明会は「採用担当業務の説明会」などではありません。
Internet Team Buildingという、ネットビジネス勧誘の説明会だったのです。
(※略称である「ITB事業」の他、「eLOHAS」、「bivio」、「forza」、「actarise」などさまざまな名称で同じことが行われているようです。)

下っ端が喋らされている感満載のK氏のたどたどしい進行に、具体性のないキラキラした抽象的な説明、そして梶原硫生(RYUSEI)という聞いたこともない創業者の紹介。
「〇〇さん、どうですか?」と発言を促された他の参加者の口から出てくるのは「凄いです、是非やってみたいです!」というサクラ丸出しの発言。
まさにアレな感じのセミナーそのものでした。

この時点でスマホを放り投げそうになりましたが、ちゃんと話を聞いているか確認を取るため、一定時間ごとに点呼を取られます。
オンラインなので離脱は容易ですが、「これリアルの説明会だったら怖くてそうそう退席できないよなあ」と感じました。
私は「騙したな!ブログのネタにしてやる!」という怒りから我慢して話を聞き続けることにし、その全体像を聞き出しました。

「30万円稼げる」というビジネスモデルの正体

アメリカに、ワールドベンチャーズというMLM(マルチレベルマーケティング、いわゆるマルチ商法)の旅行会社があります。
初期費用と月々の積立金(要は入会金と会費)を支払えば、このワールドベンチャーズの代理店になることができます。
代理店になると海外のホテルを安く利用できるほか、新たな代理店を勧誘してどんどん契約を獲得していけば、積立金が免除されたり、権利収入が発生したり、さらに成績によってボーナス報酬も貰える、という仕組みです。

要は「新たに代理店(=会員)になる人をバンバン勧誘して仲間を増やせばどんどん儲かるよ!」という仕組みですが、自分の下に会員を増やすことができなければ万単位の会費を延々と払い続けるだけ。
上層部の人間が一番儲かる仕組みの、典型的なマルチです。
採用は採用でもマルチにカモを採用するお仕事だったのです。

特徴としては、「親族や友人を勧誘するのに抵抗がある」という意見も多い一般的なマルチ商法に対し、「このビジネスはアフィリエイトとMLM(マルチ商法)のいいとこ取りで、ネット上に募集ページを作成し、そこに応募してきた人を勧誘するという仕組み」であるとしています。
加えて、「ワールドベンチャーズは2019年に日本上陸予定であり、先行者利益を得られる最後のチャンス、始めるなら今しかない!」というのを強調していました。
ですが、ワールドベンチャーズが日本上陸目前という話はずいぶん前からあるようなので、ずっと「もうすぐ日本上陸」と言い続けているのでしょう。

他にも、「このビジネスの収益は所得税を払う必要がありません」と言うから何かと思ったら香港に口座を開くというただの租税回避だった等、突っ込みどころ満載。
また、「アフィリエイトとMLMの融合」って聞き覚えあるな、マルチレベルアフィリエイト(MLA)とかいう怪しいサービスがなかったっけ?と思ったら、このビジネスはまさにそのMLA(現在は名称変更して「affirico」あるいは「YRZnet」)と組んだ商売のようでした。

説明会終盤の様子

これらの説明が終わると、「では皆さんさっそく登録フォームに入力していきましょう。クレジットカードをお手元にご用意ください!」という恐ろしい展開が待っていました。
私はギリギリまで話を聞いていましたが、「では登録完了画面のスクリーンショットをお送りください」という流れになったところでグループ通話から抜けました。
途中で通話から抜けた人は他にもいたのですが、LINEのトーク画面を見ると、途中で抜けた人は即座にLINEグループを退会させられていました。

というわけで約2時間、完全に時間の無駄でした。
最後まで残っていた人に「サクラですか?それともマジでやるんですか?」と聞いてみたかったのですが、説明会が終わった瞬間にLINEグループは消去され、既に見ることができません。

結局どうやって稼ぐのか?

手順としてはこういうことです。

1.無料ブログやクラウドソーシングサイト、SNS、1ページだけのペラサイト等を利用し、(私が見たような)求人募集をコピペで掲載する。
2.応募してきた人をLINE通話の説明会に誘い込み、うまく言いくるめて契約させる。
3.何人も契約させれば自分が支払う上納金がゼロになり、さらに収益も発生するようになる。

「internet team building」や「梶原RYUSEI」といったキーワードで検索してみると、似たような感じの雑なランディングページや、数記事しかない勧誘ブログが出てきます。
このような勧誘サイト(最後にLINEに誘導する形になっている)や、クラウドワークス上の募集など、これらこそが実際にこのビジネスに参加してしまった人がコピペで作成した、マルチ商法で自分の下に来てくれるカモを捕まえるための撒き餌というわけです。

ですが、クラウドワークスでこの募集をするのは、契約前に個人の連絡先を聞き出す点でも、アフィリエイト目的の求人を出す点でも明確に規約違反であり、公式のユーザーフォーラム「みんなのお仕事相談所」でもよく注意喚起されています。
ランサーズ等の他のクラウドソーシングサイトだけでなく、SKIMA等のスキルシェアサービスやBOOTH等の販売プラットフォーム、Instagram等のSNS、さらにはジモティーなどでも募集が行われているようで、カモを引っかけるためには手段を選ばない様子です。

クラウドワークス上に存在する「30万円~50万円稼げます!」という案件には怪しさを感じていたものの、ダイレクトにオファーが来たことで「もしかしたら本当にいい仕事なのかもしれない」という希望をわずかながら持ってしまったのが今回の敗因です。
私はクラウドワークスの自己紹介ページに総務人事系の職歴を書いていたのですが、おそらくS氏はそれを見たうえで、タイトルでごまかして一本釣りしにきたのでしょう。

最近のクラウドワークスは規約違反の悪質な案件の締め出しに力を入れているようですが、この手の募集はあいかわらず時々掲載されています。
NGワードで縛ることも難しいでしょうから、いたちごっこの様相を呈しているのでしょうが、このような詐欺まがいの案件が根絶されることを強く望みます。

その後の顛末

私はこの案件をクラウドワークスに違反通報した後、最後に一言文句を言ってやろうと思い、S氏にブチギレ長文LINEを送りました。
(読み返すともうちょっと書きようがあったな)

これに関しては「既読スルーかブロックだろうなあ」と思っていたら、意外にも返信がありました。
規約違反は自覚してるのね。まあそうだわな。

このS氏、「何もせずに応募を待つ」あるいは「誰彼かまわず同じ勧誘メッセージを送る」という手法ではなく、相手の属性を見てやり方を変えており、なかなかのやり手なのではないかと思われます。
説明会での様子からしても、説明担当だったK氏より間違いなく格上です。
最後の返信も、私が投げたボールに対し、ダメージが少なく済む文章を短時間で考えて打ち返してきた感があります。

LINEのやり取りにもある通り、この人の使っていたアイコン画像は画像検索で出てきませんでした。
もしかするとS氏は優秀な代理店として本当に月30万円以上を稼ぎまくっており、自分や家族の写真をLINEで晒せるほど自信を持ってこの商売に取り組んでいるのかもしれません。
しかし、そんなことは関係なく、年末の仕事探しの締めとしては最悪なものとなってしまったのでした。

【※以下追記】
もし「申し込んでしまったけどこんな内容なら説明会には参加したくない、どうしよう?」という場合は、個人的には「LINEをブロックしてクラウドワークスに粛々と違反報告、説明会は不参加、その後の連絡もフル無視」で問題ないと思います。
あるいは、個人情報を渡してしまった後で不安だったり、波風を立てたくないということであれば、「一応説明会にだけ参加したうえで『思ってたのと違うのでやめます』と丁寧に辞退する」という方法もあるでしょう。

なお、私はその後、完全在宅で派遣社員として働くようになり、その仕事をしばらく続けたのち障害者雇用の転職エージェントを利用してテレワークの仕事に採用されました。
世の中にはきっちりした在宅ワークの仕事もありますので、結局のところ「信頼できるルートで仕事を探すのが一番の近道だったなあ」と痛感しています。
正直クラウドソーシングは、特殊な技能を持った人以外におすすめできるものではなくなってしまっているので、時給数百円にもならない報酬で消耗する方がいなくなるのを願うばかりです。

最後に、同様の募集に潜入し、末端の一人を説得して抜けさせた方が書かれたnoteを拝読したのでリンクを張っておきます。

クラウドワークスにおけるマルチ商法|新人。
こんにちは。今回はクラウドワークス(CrowdWorks)で募集していたお仕事に応募したらマルチ商法だったお話です。 下っ端の1人だけ説得して辞めさせることが出来たので、事の経緯をお話しします。 0.登場人物 今回、登場人物か私含めて5人ほ...
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