身近なところではちょくちょく話題になるものの、どうも世間的にはあまり知られていないらしいネタがあるので、以前から個人的に思っていたことをちょっとした雑記としてまとめておきます。
先に書いておきますが、特定のメーカーやブランドを悪く言う意図ではありません。
「製品の背景等をしっかり調べると機材購入時に着目すべき点が見えてくる」という話としてお読みいただければと思います。
中国のVitoosについて
音楽機材情報ブログ「Gear Otaku」さんの2015年の記事でご存じの方も多いでしょうが、中国のVitoosという楽器関連機器メーカーがあります。
AmazonやAliExpress等で販売されている中国製の激安パワーサプライには品質がかなり怪しいものが散見されますが、Vitoosが出しているパワーサプライは(多少の難はあるものの)十分使える水準である、とよく言われています。
で、ここのパワーサプライは同じものが他のメーカーにもOEM供給されているのか、同じ形状のパワーサプライが複数のブランドから発売されています。
その中でも有名なのが、音楽機器の輸入代理店業務で知られるフックアップのオリジナルブランドVITAL AUDIOでしょう。
VITAL AUDIOの人気の高さに思うこと
このVITAL AUDIO製品は人気が高く、若いプレイヤーだけでなく、私と同世代の30代の人、さらにもっと上の世代の人が導入しているのも見かけます。
そして、使っている人は「先進的なイメージ」「日本のメーカーなのに安いのが良い」「この価格でこんな製品は他にない」と評価していたりします。
そう、もはやウェブ検索で文字情報を収集する人は減っており、Vitoosなんか知らないユーザーも結構いるわけです。
もちろん、その情報を知らないことが悪いわけでは決してないです。
人の意見に左右されず自分が気に入った機材を使うべきですし、海外から個人輸入で音楽機材を買うのは故障時の保証等含め様々なリスクがありますから、国内で正規に販売されているものを購入することは一つの正解と言えます。
ただ、同等製品の国内外の価格差を把握することで見えてくるものがあることも事実です。
色違いのスイッチャー
さて、このVITAL AUDIOの製品の中に、ENCOUNTER VAPS-4という、例によって真っ赤なプログラマブルスイッチャーがありました。
VITAL AUDIOの説明によると、このVAPS-4には独立型のパワーサプライも内蔵されており、複数のエフェクターの切り替えから電源供給までこれ1台でまかなえるとのことでした。
ところが、実は海外では色違いのVitoos VMPS-4というスイッチャーが売られており、価格はVITAL AUDIO ENCOUNTERの半額程度だったのです。
また、安ギターで有名なHarley Bentonブランドからも、Stomp Control 4-ISOという商品名で同形状の製品が売られていました。
ちなみに、先に発売されたのはVITAL AUDIOの方です。
ENCOUNTERが日本国内で2018年4月に発売された後、2019年6月ごろにVitoosブランドの方が海外で発売されています(契約の範囲内で企画を流用した感じでしょうか)。
Harley Bentonの方も2019年に発売された模様です。
同じようなコンセプトのパワーサプライ内蔵スイッチャーとしては、One ControlのChamaeleo Tail Loop MKⅡがあります。
VITAL AUDIOのENCOUNTERはこれよりだいぶ安かったわけですが、同じものがそれよりもさらに大幅に安い値段で海外流通していると考えると、不安に感じた人もいたのではないかと思います。
日本のメーカーのものだからと安心して買った機材なのに、海外で半値で売られている製品と同じものかもしれないということですから、それも仕方ないかもしれません。
機材選びでどこに着目するか
ただ、私が今回言いたいのは、「実は日本のメーカーが出してるアレってガワが中国メーカーの奴なら安く買えるんだぜ笑」などという話ではありません。
この件がそうではないにせよ、「日本メーカーの先進的な製品だし、雑誌にも載ってたから信頼できる!」という考えが必ずしも正しいとは限らない、ということです。
「中国ブランドのエフェクターというだけでバカにする一方で、日本企業のブランド名がついたエフェクターにはやたら期待値が高いタイプの人」がVITAL AUDIOを大絶賛していたりするのを見ると、少し危うい印象を受けるのです。
最初に書いた通り、これは特定メーカーへの文句ではないですし、最近の中国製品のコストパフォーマンスが高いことも確かです。
ただ、VITAL AUDIOに限らず「どこの国のメーカーだから」「ある程度信頼できそうな価格帯の製品だから」という点だけを機材選びの基準にすると、本当に着目すべきポイントが見えなくなるかもしれない…ということは頭の片隅にでも置いておくべきでしょう。
音楽機材に限らず家電などでもそうですが、「これだけの多機能でありながら〇万円で流通している、ということは100点満点の性能or耐久性ではないのだろう」と予測をつけるのは、購入するか否かの判断だけでなく、購入後の取り扱いの上でも重要なことだと思うのです。