私が過去に所有していたコンプレッサーの中で、トップクラスに高品質だったと今でも思うのがInner Bamboo electronのULTIMATE COMPです。
現在のInner Bamboo Bass Instrumentsのハイエンドコンプ、U-Ⅱの前身機種にあたります。
当時のことを記録した情報が手に入らなくなりつつあるので、紛らわしい「都コンプ」「都こんぷ」のことも含め、覚えているうちに書いておこうと思います。
GARAGE@YANMOの「都コンプ」
まず最初に、ULTIMATE COMPのルーツについて。
ずいぶん前の話になりますが、かつて「GARAGE@YANMO」というホームページがありました。
そこでは管理人yanmo氏による音響機器の回路図が公開されており、それを参考にコンプやプリアンプ等を自作する人が多くいました。
私自身は自作とは縁が無いのですが、2chの機材スレでそのサイトの存在を知ったのが2009年頃だと思います。
そこで公開されていた中でも非常に有名だったのが、都コンプという名前のコンプレッサーでした。
しかし、そのyanmo氏は2012年にサイトを閉鎖してしまいます。
都こんぶのパロディ「都こんぷ」
ここで一旦話が変わるのですが、この都コンプに関して、若干ややこしい話があります。
この画像は10年以上前にネット上でネタ的に有名だった、酢昆布の「都こんぶ」のデザインを模した「都こんぷ」です。
(昔はネットで検索すれば画像がいくらでも出てきたのですが、現在ではこれ↓ぐらいしか見つからず、元々の出どころも不明です。だから「今時ネットで調べれば何でも分かる」なんてのは大嘘なんだよな)
で、この「都こんぷ」とyanmo氏設計の都コンプは直接関係ありません。
その特徴的な名称と、「都こんぷ」のデザイン面のインパクトが合わさったこともあり、誤解込みで多くの人に認知されたのは事実ですし、実際にこの2つを組み合わせようとした人もいた(※実行されたのかは不明)のですが、この部分を勘違いしていた人はかなり多かったのではないかと思います。
【後日追記】
そして歴史は繰り返す、ということで個人的には「うおお!懐かしい!」と感じたのですが、どうやら既に「都こんぷ」をご存知でない若い方もかなり多いようで、反応を見るほうが新鮮でした。↓
Happy New Year 2022!
My New Modify..
“Sour Compressor" (in Japanese SU-KONBU)This was inspired by a traditional Japanese snaks), Vinegar Kelp (sour seaweed).
It's just a handy mod with a label on https://t.co/6Mu7m1sXC4 https://t.co/rY4oBG47sg pic.twitter.com/VIGCqRCPHG— Alternative Sound Design (@Alterna_sound) January 10, 2022
ULTIMATE COMP(2013)
で、先述の都コンプの回路を元に、yanmo氏の許諾を得て作られたのがULTIMATE COMPです。
私が所有していたのは2013年に発売された、Inner Bamboo electron名義の旧型です。
新品の販売価格は4万円ぐらいだったと思いますが、発売後それほど経っていない時期に運良く中古で入手しました。
コントロールは、THRESHOLD、RATIO、LEVELの3つのノブ。
また、ON時に光るLEDのほか、「MONI」というLEDがあり、コンプレッションに応じて光ります。
現行のU-Ⅱとは異なり、アタックとリリースは固定で、SCEQ(Side Chain High Pass Filter…エフェクト音に効くハイパスフィルター。低音域だけコンプを掛けず逃がすことが可能)も搭載されていませんが、当時としては不満点のないコンプでした。
音色の特徴
音は原音の特徴を残しつつも結構はっきりした変化があり、太さが加わると同時に高音域がきらびやかになる感じ。
ですが、ULTIMATE COMPはその音質変化にいやらしさが感じられず、不自然なエンハンス感もありませんでした。
よく「原音重視」「味付けがない」と謳うエフェクターがありますが、そういうものと比べてもエフェクトオフ時のニュアンスが失われないのが素晴らしかったです。
なお、オプティカル素子を用いた光学式コンプレッサーならではなのか分かりませんが、リミッター的にアタックのド頭から音を潰す、あるいはバラつきを抑えて粗をごまかす用途には向きませんでした。
あくまでも「音作りのためのコンプ」という感じです。
キワモノエフェクター好きの自分にはもったいないと感じたため手放してしまいましたが、非常に高品質なコンプだったと思います。
【追記】SUMO COMPについて
Inner Bambooがリーズナブルな新ブランドとしてSUMO STOMPをスタートし、コンパクトな筐体に簡易的なSCEQを備えたULTIMATE COMPの廉価版、SUMO COMPが発売されています。
また、現行品のU-Ⅱは試奏でしか音を出したことがありませんが、そのお値段だけのことはある素晴らしいものでした。
興味のある方、高品質なコンプを探している方は試してみる価値ありだと思います。