私は中学生のころ、Xに衝撃を受けてベースを始め、ヴィジュアル系ロックやメタルを中心に音楽を聴いていました。
そんな1990年代の終盤、停滞気味だったV系シーンの中で頭角を現したバンドがDir en greyでした。
私は彼らの楽曲だけでなく、ベーシストであるToshiyaのウネウネと動き回るベースラインに魅了され、すっかりハマってしまったのですが、私にとって彼の演奏は「ベースにエフェクターをかける」ということを強く意識するきっかけにもなりました。
メジャー初期のエフェクティブな音作り
彼らは独特の世界観を持つバンドとして現在も人気ですが、いわゆる王道的な「V系ロック」の枠からはみ出して徐々に変化するその音楽性は、思春期だった当時の私の心を鷲掴みにしました。
そんな彼らが2000年にリリースした2ndアルバム「MACABRE」で、Toshiyaはエフェクターによって多彩な音を出していました。
中でも衝撃的だったのが、シングルとしてもリリースされた「【KR】cube」です。
イントロ(0:09~)のフィルターがかかったようなベースの音色は、エンヴェロープフィルターかワウ系のエフェクターだろうと思われます。
後にリメイクもされるバラード調の「理由」。
アルバム収録バージョンでは全編に渡ってベースにコーラスがかかっています。
そしてアルバムのラストを飾った、これまたシングル曲の「太陽の碧」。
0:34あたりで入ってくるベースにコーラスがかかっており、和音弾きによって、コーラスの揺れ感がさらに強調されていますね。
※最近は違うようですが、当時はコーラスとしてエレハモのSMALL CLONE(デカい方)を使用していたはずです。
独自性の確立とベースサウンドの変化
このアルバム以降、Dir en greyは徐々にヘヴィな音楽性にシフトしていきますが、現在の路線に通じる独自性を完全に確立したのが、2003年の4thアルバム「VULGAR」だと個人的に思っています。
Toshiyaの音作りはソリッドなものになりましたが、「audience KILLER LOOP」におけるごく短いフレーズ(0:37~)で歪みとエンヴェロープフィルターを組み合わせたような音色を用いる等、随所で個性的な音を聴くことができます。
バンドの現在
実を言うと、私個人としては2007年の6thアルバム「THE MARROW OF A BONE」以降、そこまで熱心にバンドを追いかけているわけではありません。
なので、この記事でも大文字の「DIR EN GREY」ではなく、あえて旧表記の「Dir en grey」と書きました。
とはいえ、先日発売された10枚目のアルバム「The Insulated World」は鋭利さをさらに増した素晴らしいアルバムでしたし、私にとっては青春時代から現在までずっと応援している数少ないバンドであり、受けた影響の大きさは計り知れないのです。