ギターやベースについて、よく「弦のテンションが強い(きつい・硬い)」あるいは「テンションが弱い(ゆるい・柔らかい)」という言い方をしますが、そのあたりを数値的に気にかけている人は案外少ないように思います。
私は「演奏時のストレスを軽減するために各弦のテンションをなるべく揃える」ということを意識しており、そのためにWEB上の弦張力計算ツールを使っています。
今回はその使い方と、個人的に気に入っている弦の組み合わせを、ギター・ベース双方について紹介します。
これについては別途記事にしましたが、ギター・ベース奏者の間では「テンション」という言葉に様々な意味が包含されており、それが混乱を招いていると常々思っています。
そのため、以下では極力「テンション」という表現を避け、Tensionの日本語訳として「(弦の)張力」という表現を用います。
ストリングテンションカリキュレーター
ダダリオからは「バランスドテンション」セットが発売されており、各弦の張力を揃えたい場合にはこれを買うのが便利です。
これとバラ弦を組み合わせる必要がある場合や、他のメーカーの弦を使ったりする場合、私は弦の太さごとの張力を調べたうえで、なるべくテンションが揃うようにしています。
たまに「それどうやって確認してるんですか?」と聞かれることがあるので、まずは私が弦のおおよその張力を確認したいときに使っているウェブサイトを紹介します。
「string tension calculator」(弦張力計算機)で検索すると、英語のサイトがいくつか出てきます。
過去にはダダリオの計算ツールもありましたが、現在は公開されていません(※各弦の張力を記載したpdfファイルは公開されている)。
個人的に一番使いやすいと感じているのが、stringtensioncalculator.comです。
これの何が優れているかというと、
・ギターにもベースにも対応している
・様々なスケールを選ぶことができ、マルチスケール(ファンドフレット)や、弦ごとに異なるスケールも指定できる
・D'AddarioとKalium Stringsのゲージを採用することにより、幅広い弦のゲージが選べる(※ベースはKaliumのみ)
・際限なく弦を増やすことができる
という点です。
操作方法
こちらが初期画面です。
一般的なギターのロング(レギュラー)スケール25.5インチで、弦ゲージは09-49となっています。
「Tension」の列に表示されているのが弦の張力です。
単位はlbs(ポンド)で、1ポンド=約0.454キロとなります。
文字色は張力が強いほど赤色に、張力が弱いほど黄色に変化します。
左上の「Guitar/Bass」でギターとベースを切り替えることができます。
「Single Scale:25.5"」と表示されている部分を切り替えると、スケール(弦長)が変えられます。
シングルスケール(一般的な全弦同じスケール)だけでなく、マルチスケールも選ぶことができます。
目当てのスケールがない場合でも、「Scale」の△▽で、全ての弦まとめてスケールを細かく変更できます。
また、マルチスケールであれば、弦ごとにそれぞれスケールを変えることも可能です。
同様に、チューニングについても、「Note」の△▽で各弦まとめて変更できますし、弦ごとにチューニングを変える(ドロップチューニング、オープンチューニング)ことも可能です。
弦の太さも変更できますが、世の中に存在するあらゆる弦ゲージを網羅しているわけではないので、目当てのゲージが無ければ一番近い数値で算出することになります。
一番下の「+Add String」で弦を増やすことができます。
弦テンションの例
ギター弦のゲージの定番は09-42でしょうか。
試しに入力してみるとこうなります。
2弦が目立って張力が低いことが分かります。
ベースの初期画面では、一般的なロングスケール34インチで弦は4本です。
Kalium Stringsのゲージということもあり、37-110という見慣れない太さになっています。
試しにこれを、よく見る45-105のゲージに近づけてみましょう。
全く同じ太さにはなりませんが、おおよそこんな感じです。
こうして見てみると、特にベースにおいて、よくある弦ゲージだと各弦の張力がかなりバラバラであり、かつ非常に張力が強いということが分かりますね。
自分のギターの弦ゲージ
私は現在、6弦ギターをドロップBチューニング(全弦1音半下げ+6弦のみさらに1音下げ)で運用しています。
弦はElixirの7弦用Lightの6弦を抜いて張っているので、ゲージは010、013、017、026、036、056です。
これを入力するとこうなります。
かつ各弦の張力がバラけすぎないようにしつつ、低音弦はやや硬め、高音弦は柔らかめという、自分にとって理想に近いバランスを実現できました。
自分のベースの弦ゲージ
私は以前から、「ベースの一般的な弦は太すぎる・硬すぎる・弾きにくい」と思っています。
特に多弦ベースであれば、ネックへの負荷も大きな問題となりますし、弦ごとの張力がバラバラだと捻じれの原因にもなり得ます。
そのため、私は個人的な好みで「バランスドテンションの超ライトゲージ」的な組み合わせの弦を愛用しています。
現在使っているのは、D'AddarioのBalanced Tension Mediumを6弦ベースの下4本に、そして高音弦にはギター用のバラ弦036と026という組み合わせです。
ゲージは026、036、050、067、090、120となります。
これを一般的な6弦ベースのチューニング(Low B - High C)にしています。
E弦が90というのは世間的には相当細い部類かと思います。
30インチのショートスケールのベースよりももう少し軽い張力を目指した結果がこれです。
Low B弦とE弦の張力を揃えようと思ったら、120と90になるわけです。
これにより、「自分なりのバランスドテンション」とでも言うべき統一感のある弾き心地が実現しました。
なお、エリクサーでこれになるべく近いものを目指そうとするなら、040、060、075、095のスーパーライトゲージに、130のバラ弦、そしてギター用の030のバラ弦あたりになるでしょうか。
「一般的なゲージ」か「テンションの揃ったゲージ」か
ここまで書いてきたとおり、世間的にメジャーな弦ゲージの組み合わせは、必ずしも各弦の張力が揃っているわけではありません。
ただ、「慣れた張力バランスの方が弾きやすい」というのも当然あるので、「ギターの1弦より2弦の方がテンションが緩いことがチョーキングの力の入れ具合に直結する」あるいは「ベースでスラップするには2弦の硬さがあってこそ」というのも人によって異なるでしょう。
とはいえ、試しに一度D'Addarioのバランスドテンション弦を試してみたり、かなり細めの弦を試してみたりするのには価値があるのではないかと思います。
各弦の張力を揃え、かつ弱く抑えるということは、ネックの反りやねじれを抑えることに繋がる可能性がメリットとなり得ます。
やってみると案外気に入るかもしれませんので、機会があればぜひ、これまでとは全く違うコンセプトの弦ゲージを使ってみてください。
↓私が弦を切るのに使っているおすすめのニッパーはこちら。
2mmのピアノ線、3.4mmの中硬線がカットできるとのことだけあり、軽い力でスパスパ切れます。