私が現在所有している唯一のベースを紹介します。
Ibanezの安い6弦ベースを改造しまくったものです。
(※旧ブログで約半年に渡り書き連ねた改造過程をまとめているので、だいぶ削りましたが長いです。)
改造のビフォーアフター
こちらのベースは、2022年に中古で見つけて購入した物です。
定番のSRシェイプですが、このSR306は国内ではイケベ楽器限定扱いになっていた海外仕様品です。
上位機種と異なる点として、ポールピースが露出したタイプのハムバッキングピックアップが載っており、ブリッジの弦間ピッチ調整機能はありません。
ボディはニヤトー、ネックはメイプルとウォルナットの5ピースで、指板はジャトバ。
重量は約4.2kgで、6弦ベースとしては軽いですが、トラスロッドが2本入っていることもあってヘッド落ちの傾向が強かったです。
コントロールはマスターボリューム、ピックアップのバランサー、内蔵プリアンプの3バンドイコライザーに加えて「3-way Power Tap switch」というコイルタップのミニスイッチも備えていました。
↓
この改造過程を紹介します。
①座って弾くときに楽器がずれないための滑り止め
もう10年以上になりますが、私は過去に出入りしていた某楽器店で教えてもらって以来、ギターやベースに滑り止めを貼り付けるようにしています。
【これについては体への影響を含めて以前に詳しく書きました↓】

1990年代ごろには、SRをはじめ「Fender等の伝統的なエレキベースと比べて小ぶりなボディの楽器」がかなり多かったように思います。
しかし、この手のベースは「取り回しが良い」とされる一方、ボディが小さすぎるゆえに座って弾くときの安定性が悪いです。
さらにこの楽器の場合、ボディ外周の丸みを帯びた造形とサラサラの塗装もあって、腿に乗せたときに楽器が滑って全く固定できないのです。
その形状の特徴を踏まえ、このように滑り止めを貼りました。
滑り止めの角は丸く落としておくと剥がれにくくなります。
今回はさらに安定性を増すため、胸に接する部分にも滑り止めを貼りました。
楽器って足だけに当たってるわけじゃないんですよね。ストラップピンのある低音弦側ホーンの裏側が胸あたりに触れます。
これにより、座奏時の演奏性の悪さはかなり改善しました。
木製の楽器に滑り止めを貼ることに抵抗を感じる人は多いと思いますが、簡単な改造で大きな効果が得られるのでおすすめです。
②ブリッジ側ストラップピン増設
「エレキギターやエレキベースを壁やアンプに立てかけたら、目を離した瞬間に楽器がバランスを崩して倒れる」というのは定番の事故です。
これに関して、このようにストラップピンが2つ打たれているだけで転倒リスクはかなり減らせます。
今回はストラップピンは元々のものを流用し(※計3つ必要になるが以前所有していた楽器についていた同形状のピンが手持ちにあった)、ネジは元のものより少し長いステンレスの皿ネジを組み合わせて使いました。
ちなみにIbanezのここのネジは、一般的なストラップピン用よりも太めです。
他メーカーの一般的なストラップピンには適合しませんし、Ibanez製品のパーツでも太さが違うものはあると思います。
残った穴はパテ埋めし、百均の黒マニキュアでタッチアップした後、細番手の紙やすりで軽く馴染ませました。
ストラップの脱落防止策は、以前はロックピン派だったのですが、現在はストラップラバーを使うようにしています。
なお、ブリッジ側に2つピンがある場合、どちらにストラップを付けるかは演奏性にも影響します。
個人的には高音弦側のピンにストラップを付けるほうが「ヘッド落ちが緩和すると感じられる」「楽器がやや右に寄って左手がローポジションを押さえる時に楽」という理由で好きですが、逆の方が演奏しやすいという人もいるので、両方試して好きな方に付けてください。
③パッシブ1PU化、ポット・ジャック穴埋め
SRシリーズのシールドを挿すジャックは、斜めにザグられた穴にビルトインタイプのジャックが埋め込まれています。
これは正直シールドの抜き挿しがしにくいですし、L型プラグとの相性が悪いのも嫌なので、ジャックを交換・移設します。
あわせて内蔵プリアンプを外して回路をパッシブ化、コイルタップの機能も撤去、さらにフロントピックアップも外してリア一発とし、1Vol・1Toneのシンプルなコントロールにします。
この作業は、以前からお世話になっている近所のO2 Factoryさんに依頼したものです。
ジャックはPure Tone Jackを持ち込みました。パッシブにするのでモノラルのPTT1です。
(※Pure Tone Jackはインチサイズかつナットが1つしか付属しない点に注意。菊ワッシャーもついていません。)
ジャック以外で交換が必要になるパーツについては特にこだわりが無いのでお任せしたのですが、コンデンサに関してはTwitterで見た静電容量0.022μFという数値が頭の片隅に残っていたので、それだけ指定しました。
この数値が小さい方がローパスフィルターのカットオフ周波数が高くなることにより、トーンを絞る調整幅が浅くなる(=トーンをゼロにしてもそこまでモコモコにならない)ということで、実際「トーンコントロールの全領域に渡って使える音がする」という結果が得られました。
作業完了後がこちら。
ジャックはボディトップに配置しました。
トーンポット移設・穴埋め
ここから再びDIYです。
トーンコントロールの位置を自分好みにすべく、新たに穴を開けてポットを移設するとともに、空きっぱなしになっている穴を全て埋めます。
この手の穴埋めの際は、いつも木製・帆船模型マイクロクラフトさんで購入した丸棒を使っています。
8mm径のウォールナット丸棒を短く切ったものでポットの穴を埋め、手持ちの艶消しブラック塗料で黒く塗ったのがこちら。
さらに、無用の長物となった元々のアウトプットジャックの穴もエポキシパテで埋めていきます。
ここで使用したのはセメダインの「エポキシパテ木部用」で、比較的練りやすく、乾燥が早く、かつ加工しやすい硬さに仕上がるので扱いやすかったです。
少し固まってきたぐらいの段階で、軽く濡らしたヘラを使い、盛りすぎた部分を除去しておくと後の作業が楽です。
こちらも艶消しブラックの塗料で塗装し、艶を抑えるために細番手の紙やすりで表面を仕上げました。
思ったほど綺麗には仕上がりませんでしたが、「まあ安い楽器だしいいや」の精神で、遠目に見れば目立たないので今回はこれで完了とします。
ピックアップをLACE Alumitoneに交換
なお、もともとピックアップ交換までする予定はなかったのですが、以前別のベースで気に入っていたLACEのAlumitone Bass Bar 4.5が入手できたので交換しました。
Alumitoneはパッシブピックアップでありながら出力が高く、かつ独自構造により非常に軽量です。
見た目上のサイズは一般的なソープバーピックアップより一回り大きいのですが、土台というか足元というか、ザグリに収まる部分はコンパクトになっているので、木部に手を加える必要はありません。
取り外した元々のピックアップが約260gあったのに対し、このLACE製PUはなんと約80gしかありません。
ピックアップを1つ交換するだけで約180gの軽量化になったわけです。
これらの改造により、パッシブでありながらパワーがあり、ローからハイまでそこそこしっかり出るサウンドが得られました。
最大の変化は、アクティブ回路撤去・フロントPU撤去・リアPUを軽量なものに交換したことで、重量が4.2kgから3.6kgと大幅に軽量化した点です。
とはいえ、ボディ側が軽くなりすぎたことで元々あったヘッド落ちがさらに悪化してしまったので、この点は今後の改造で改善を目指していきます。
④ペグ交換、Ibanezロゴ入れ
ヘッド落ち改善といえば軽量ペグへの交換が定番ですが、弦さえ通せればギター用ペグの方がもっと軽くできるので、まず1弦・2弦についてペグをギター用のロックペグを採用し、軽量化と利便性の両立を目指します。
その後、3弦~6弦をベース用の軽量ペグに交換します。
GOTOHマグナムロック(リバースヘッド用)
今回使うGOTOHのギター用ペグのタイプは、ネジの位置がベース用ペグと同じような位置にあるSG301です。
かつ、弦を通してペグを回すと勝手に弦がロックされる従来型のマグナムロックを選びました。
個人的に、裏側から手で締めるタイプのMG-Tよりもこちらの方が好きなのです。
ペグボタンのチョイスは、ペグ配置3:3のギター向けの大振りなタイプ、かつ樹脂製の「B01」です。
これにより、ペグ1個あたりの重量は29.5gでした。
元々ついていたベース用ペグが58.0gだったので、重量はなんと約半分です。
1弦と2弦のペグをこれに交換するだけで、単純にペグを1つ外すのと同等の軽量化ができることになります。
なお、マグナムロックは弦を通す穴の大きさが低音弦用(1.8mm)と高音弦用(1.2mm)で違います。
「太い弦が通せるR側用のマグナムロック」となるとリバースヘッド用になってしまいますが、今回使ったペグはTREASURE POWERさんでバラでオーダー購入しました。
GOTOHのペグは、楽器店を通したオーダーであれば、好きな仕様・好きな個数で発注可能です。
物としては「GOTOH SG301-MG-B01(R側・低音弦用)」となります。
GOTOHギター用ペグのペグボタン素材ごとの重量差の情報が意外とネット上に無いので、メーカーに確認しました。
今回のペグボタンの形状「01」の場合、通常仕様のジンク(亜鉛合金)ボタン「01」と比較してアルミボタン「AB01」の方が6.0g、樹脂ボタン「B01」の方が8.5g軽くなるようです。
多少の個体差はあるでしょうが、ジンクボタンのSG301-MG-01で38.0g、アルミボタンのSG301-MG-AB01で32.0g、樹脂ボタンのSG301-MG-B01が29.5gとなります。
すなわち、標準のジンクボタンだと、せっかくギター用ペグにしても、ベース用の軽量ペグGB350(40g)とさほど変わらないということになってしまいます。
なお、ジンク→アルミ→樹脂と値段は高くなります。
コスパが高いのはアルミボタンと言えそうです。
さて、ベース用ペグの穴の径が14mmに対し、ギター用ペグの穴は10mmです。
サイズが全く違うため、穴埋めと穴の開け直しが必要になります。
また、SRは小振りなヘッドシェイプゆえにペグ配置に無理があり、ナット部分で弦がカクッと内側に折れ曲がっているので、これを極力解消したいところです。
丸棒をヘッドの厚みと同じ長さに切断し、タイトボンド3で接着。
その後、位置決めした場所に10mm径の穴を開けます。
このあと1弦ペグの仮留めを経て、2弦も同様に作業。
ペグボタンの配置と、弦がまっすぐに走ることのバランスを見ながら位置決めし、最終的にこのような感じになりました。
なお、ギターペグの1.8mm径の穴に通る弦のゲージは数値上は.070までいけるはずですが、ギター用のロックペグをベースに使うのは本来の用途から完全に外れており、「弦を通せるか」と「実用に耐えるか」は当然ながら別問題ですので、何かあっても完全に自己責任です。
また、ベース弦特有の問題として、飾り糸が巻いてある弦はロックペグとの相性が悪いことも分かりました。
この改造の最大のポイントは「樹脂ボタンのギターペグ」を採用した点にあります。
先に書いた通り、仮に標準仕様のジンクボタンのギターペグを使っていたら重量は38gだったわけで、ベース用の軽量ペグであるGB350(40g)を採用した場合と2gしか変わりません。
ペグボタンのチョイスによっては、面倒な作業に見合うだけのメリットが得られるとは言い難い点に注意が必要です。
SDGRロゴをIbanezロゴへ
作業の順番がちょっと変ですが、次はSRシリーズ特有のダサいロゴを撤去し、Ibanezロゴにしてやります。
このSDGRロゴはシールのようなもので、その上からクリア塗装が吹いてあるので、表面にヤスリをかけたうえでスクレーパーで引っかけるとうまく剥がすことができました。
ここに正しいIbanezロゴを入れます。
こういうことはあまり公言すべきではないのでしょうが、自分で使う楽器ですし、別メーカーの楽器や模造品ではなく本当にIbanezの製品なので、そこはOKということにしてください。
私はこのSDGRロゴを廃止してほしいとずっと思っています。
Ibanezロゴを切り取ったカッティングシートでマスキング。
白の塗装は、厚みを出しつつ楽をするために百均のマニキュアで済ませました。
十分に乾燥させてから、ロゴの端を針で押さえながら慎重に剥がし、無事うまくいきました。
GOTOHレゾライト GB350
このロゴの上からコーティングをする前に、残りの4つのペグをベース用軽量ペグに交換するための加工を行います。
GOTOHのRES-O-LITE(レゾライト) GB350とHipshotのUltralite(ウルトラライト) HB6Y
で迷った末、1・2弦のギターペグと同じGOTOH製を採用。
一般的な2:2の4つセットが安く入手できました。
これを、6弦ペグだけ天地逆に設置することで、無理矢理このベースに搭載します。
前からこれをやってみたかったのです。
通常、このようにペグの高音弦用と低音弦用を逆にして使うと、ペグを回した時に弦を巻き上げる回転方向が逆回りになってしまうという問題を招くのですが、これは弦も反対巻きにすることで相殺できます。
ATLANSIAやTUNE、IbanezのAFRといった細長いヘッドを有するベースで、配置上の工夫として採用されている手法です。
ただ、このままだと6弦ペグボタンだけ離れすぎており、配置がおかしいです。
また、ナット部分で弦が外側に向かって大きく曲がることは、ナットの破損を招きかねません。
これを踏まえ、6弦ペグの元の穴は拡張して埋め、適切な位置に14mm径の穴を開け直しました。
あとは艶消しのクリアラッカーで塗装して、ヘッドの作業は完了です。
見た目の雑さは置いといて、機能面に関してはかなりイメージ通りのものが出来上がりました。
6弦がナットで外側に曲がるのも一定程度緩和されたので、おそらく問題ないのではないかと思います。
元のペグの重量は1個あたり58.0gで、6個で348gありました。
これを樹脂ボタンのギター用ペグ(29.5g)2個とレゾライト(40.0g)4個に交換したことで、約130gのヘッド軽量化を達成しました。
⑤指板延長、フレットレス化、Luminlayドット、カッタウェイ拡張
続いても前々から一度やってみたかった改造、指板の延長です。
あわせてフレットレス化するとともに、最終的にボディも加工することになりました。
延長指板の作成
今回、フレットを抜くのに初めてちゃんとした工具を使いました。
これはトップカッターという工具で、刃先の幅が3mm~10mmで4種類あり、私は7mm幅のTC-7Zを買いました。
これ、本当に使い勝手が良くておすすめです。
(私が買った時は7mm幅だけ少し安かったのでこれにしたのですが、刃先の幅は狭い方が細かい作業に向くでしょうし、一気に作業を進められるのは刃先が広い方だと思います。これは好みで選んでください。)
続いて、手持ちのOLFAクラフトのこで指板を切断(※これをこんな使い方するのは全くおすすめしない)し、この24フレット以降の部分をサンディングしたうえで、延長指板の土台にします。
以下、接着の都度当て木をしてクランプをかけ、乾燥後は必要に応じてサンディングもしているので、作業完了までにはかなり時間がかかっています。
ここからも接着剤にはタイトボンド3を使用。
最初に使うのは1mm厚のウォルナットの薄板材です。
これを目標サイズより気持ち大きめに切り出し、木目の縦横を交互に重ねて貼っていきます。
木目を互い違いにするのは反りを防ぐことが目的というか、合板作りの基本ですね。
3枚重ねた後、補強のつもりで裏面にも1枚貼りました。
合計4枚です。
しかし、この時点で横から見てみると、指板面と平行になっていません。
土台の作業に丁寧さが足りませんでした。
やむなく、もう少し後で登場する予定だった0.5mm厚のローズウッド突板を短冊に切り出し、ネックシムの要領で角度を調整します。
指板エンド側から厚みを増すように貼り重ねることで、2mm程度の厚みを足すことができました。
写真だと改善具合が分かりにくいですが、ほぼ問題ないレベルまでもっていけました。
そしてここからが本題です。
ローズウッドやエボニー、メイプルといった、指板に使われるような硬質な木材を実際に加工したことがある方なら分かると思いますが、これらの材の表面をなだらかなRがつくように加工するのは相当ハードルが高いです。
ベルトサンダー等の電動工具がないとかなり厳しいですし、そこを気合で何とかするとしても、適切な指板Rを付けるような繊細な加工は素人の手作業だと困難です。
そこで私が考案したのが、指板Rに沿うように、0.5mm厚の突板を階段状に重ねるという方法です。
硬い板を曲面になるまで切削するのは大変ですが、最初から階段状になっているものの角部分を削って均していくだけであれば、労力は比較的小さくて済みます。
荒目のサンドペーパーから始めて、番手を上げながら表面を削るとともに、適宜外周も成形していきます。
最終的には油研ぎの要領で、XoticのOIL GELを使って研ぎ上げました。
わずかに残った段差も埋まり、最終的に元々の指板とほぼツライチに仕上がりました。
フレットレス化
ここからさらに指板全体をフレットレス化する作業に移ります。
フレットラインには蓄光インレイ素材のLuminlayを使いたかったのですが、あのフレットライン材は結構高価なので、一旦のっぺらぼう風のフレットレスにしたうえ、指板サイド用の蓄光ドットを指板表面にも散りばめていくことにしました。
全てのフレットを抜き、指板表面・指板サイドともにポジションマークをドリルで除去したら、切り出したローズウッドの突板をフレット溝に打ち込んでいきます。
指板表面のポジションマークの穴には、5mm径のレザーポンチで打ち抜いた突板を、適切な高さになるまで重ねて埋めていきます。
指板サイドの穴は、ウォルナット丸棒で濃いめの色のものがあったので、それをカットして埋めていきます。
ここから表面を均していきます。
ヤスリをかける前の段階の作業として、先ほどフレット抜きに使ったトップカッターは本来こういうバリを取る用途の工具なので、はみ出したフレットライン材やサイドポジション材を取り去っていきます。
続いてスクレイパーを使い、指で触っても「凸凹はあるけど引っかかりはない」ぐらいのレベルまで持っていきます。
これを、紙やすりとOIL GELで研いでいきます。
自力での指板修正(すり合わせ)はハードルが高いので、ここではあくまでも表面を綺麗にするだけの、薄皮一枚ぶんを削り取る力加減で作業を進めました。
ここまで自力でやった段階で、O2Factoryさんでナット溝を削ってもらいました。
ナット弦高が下がったことで、左手の押弦が非常に楽になりました。
↓
Luminlay埋め込み
ここから再び自力で作業。
2.5mmのサイドドット用Luminlay(今回はグリーンを使用)を、指板サイドのフレットラインと同じ位置に入れていきます。
赤矢印は「もともとポジションマークがあったところ」です。
少量のゼリー状瞬間接着剤を流し込んだら、短く切ったLuminlayの丸棒を打ち込みます。
続いて指板表面の作業です。
以前所有していたNS Designのアップライトベースから着想を得て、指板全面に渡ってドットを打とうと決めていましたが、イタリアの名手Dominic Forest Lapointeがちょうど新しいベースの写真をアップしていたのも参考にしました。
(引用元:Instagram)
このベースは左利き用でちょっと分かりにくいので、画像を反転したうえで拡大してみましょう。
フレットライン(黄色の線を引いたところ)ジャストの位置ではなく、ちょっとヘッド寄りにポジションマークが打ってあるのが分かります。
これがすごく理にかなっていて、フレットレスってフレットラインちょうどの位置を押さえると音程が若干シャープしてしまうんですね。
なので、指の中央で押さえる位置はフレットラインよりわずかにヘッド寄りが適切です。
これを取り入れることにしました。
位置決めには「弦に隠れて見えない」とならないことにも注意を払い、作業が完了したのがこちらです。
Luminlay丸棒の素材は、すこし短めに埋め込んで3本でギリギリ足りました。
では電気を消してみましょう。
バッチリです。
27フレット相当の指板がこのように光っているのはなかなか壮観です。
カッタウェイ拡張
指板を延長したのは実用性よりも「一度やってみたかった」程度のものだったのですが、せっかくならストレスなく弾けるようにもしたいと思ってしまいました。
となると、ベースのボディを削ってカッタウェイを深くするしかありません。
最初は鬼目ヤスリでゴリゴリ削っていたのですが、ボディ材のニヤトーは比較的柔らかいとはいえ手作業で削っていくにはなかなか骨の折れるものがあり、途中からは糸ノコやドリルを駆使しました。
なるべく少ない作業量で済ませるつもりが、結局、最終的には丸ごと取り去るような大工事になってしまいました。
この部分の塗装については、車の塗装補修用タッチペン(艶消しブラック)を使いました。
塗ったそばから固まっていく特性を活かし、「雑な作業による傷を隠す」と「ある程度しっかりした塗膜を作る」を両立させようと考えたのです。
何度も塗り重ねてはサンディングしてを繰り返した結果、この目論見はある程度うまくいき、遠目に見ればさほど違和感がない程度の仕上がりにはなりました。
⑥積層合板フィンガーランプのR加工
一時期ほどは流行っていませんが、個人的にフィンガーランプは必要性が高いパーツです。
1ピックアップ化により、ランプの面積は必然的に大きくなります。
先に作成した延長指板と同様の工法で、「見た目は単板っぽいけど実はめちゃくちゃ端材を再利用した材料」を使います。
まずは1mm厚のウォルナットとメイプルの薄板が中途半端に余っていたのを、つぎはぎしながら重ねて接着していきます。
反りに対する強度を出すため、下の4層は木目を一方向に揃えず、縦横に交差するように貼り合わせています。
そして、0.5mm厚のローズウッド突板をこの上に貼っていきます。
既に階段状になっている段差をさらに細かく、実際の指板Rに近付くように貼り重ねていきます。
これがきでたら、あとは表面から段差が無くなるまでひたすら紙ヤスリをかけていくだけです。
過去に小さいサイズの一枚板、いわゆる「木のはがき」を使ってランプを作ったことが何度かありますが、あれを手作業で加工するのと比べるとかなり楽です。
合板なので反ってしまうリスクも低いでしょう。
表面は毎度おなじみOIL GELで仕上げました。
断面を見ないとこんな方法で作ったものとは分からないでしょう。
横に置いているのが素材となった0.5mm厚のローズウッドの突板です。
これをm2のステンレス皿ネジ(今回使ったのは長さ20mm)で固定します。
ネジの頭がはみ出さないよう、5mmのドリルで皿もみをしました。
裏面からも皿もみしてあります。
なぜそんなことをするかというと、このバネが上手いことはまるからです。
このギター用のピックアップマウントスプリングを噛ませることで、高さの微調整が可能となります。
まあ、実際にそんな調整をすることは多くないのですが、「いざという場合には調整可能である」という事実からくる安心感が重要なのです。
というわけで、木材を無駄にせず大判サイズのフィンガーランプを作ることができました。SDGsです。
⑦バルサ材で雑にザグリ埋め
フロントピックアップや電池ボックスの穴を埋め木するかどうか悩んでいたのですが、とにかく楽な方法で埋めてしまおうと考え、バルサ材を使うことにしました。
バルサ材といえば、加工が楽な工作材料の代名詞です。
非常に軽く柔らかいので、木材でありながらカッターナイフでサクサク切れます。
強度は全く足りないので、ネジ穴を開けるような箇所に使うべきではありませんが、「とにかく見た目だけの問題、穴埋めさえできればそれでいい」というケースにおいては選択肢となるでしょう。
ザグリのサイズに合わせて切り出し、ヤスリでサイズを微調整します。
マスキングのうえ、またしても車用のタッチアップペン(艶消しブラック)で塗りました。
「どうせほとんどフィンガーランプで隠れるし適当でいいや」みたいな考えはどうかと思うのですが、でもやっぱり適当でいいことにします。
こっちも一応塗装しましたが、自分がバンドマンであることを忘れてしまいそうなので、上から所属バンド(全然活動してない)のステッカーを貼りました。
⑧ホーン側ストラップピンを6cm延長
先に書いた通り、ヘッドの軽量化はかなり成功したのですが、ボディ側が軽すぎて満足な重量バランスにはなりませんでした。
最後の改造として、強引な方法でM6のボルト類を使った延長ストラップピンを作成し、ヘッド落ちの改善を目指しました。
この穴の入り口部分だけを拡張すべく、Φ8.5のドリルで20mmの深さまで掘ります。
そして、そこにPタイプ(ねじ込み式)の鬼目ナットを埋め込みます。
ここに、ストラップを挟むためのM6直径20mmのワッシャー2枚と高ナット(長さ60mm)を噛ませた長さ120mmのステンレスボルトをぶち込んだら完成です。
私はいつもネジのトミモリさんでこの手のボルト類を購入しています。
最終結果
というわけで、予定していた全ての改造が完了しました。
Ibanez SRは基本的に軽量なものが多いですが、パッシブ化・1PU化等によりさらに軽く、その代償として発生したヘッド落ちもおおむね解消することができたと思います。
「重量4kg切ってるのにヘッド落ちしない6弦ベース」というのはなかなか悪くないのではないでしょうか。
そのうちヘッドレスにするかもしれませんが。