自作曲のレコーディングでどうしてもアコギの音が欲しい箇所があり、運良く状態の良い中古があったのでYAMAHAのサイレントギターSLG200Sを購入しました。
人気があるだけのことはある出来の良さなのですが、弾きにくいと感じる部分もあったところ、簡単な改造で演奏性を劇的に向上させることができました。
かなりおすすめの改造だと思うので、試しに一度だけでもぜひやってみていただければと思います。
本記事で紹介するホーン部品の移設は、同形状であるナイロン弦モデルの「SLG200N」でも可能です。
一方、旧モデルの「SLG100」シリーズではホーンの形状が大きく異なるため、有用ではないと思われます。ご留意ください。
SLG200Sの概要
これは「近所迷惑にならないアコースティックギター」として定番中の定番である、YAMAHAサイレントギターの現行品「SLG200」シリーズのうち、ブロンズ弦のモデルです。
一般的に「アコギ」「フォークギター」と呼ばれるタイプのものになります。
ヘッドホンやアンプ等につないで音を出すには電池(単三乾電池2本)が必要で、パッシブ運用はできません。
アダプターからの給電が可能で、純正品としてYAMAHAのPA-3Cというアダプターがあります。
DC12Vのセンタープラスなので、一般的なエフェクター用アダプターは使えません。
コントロール部にはボリューム、ベースとトレブルのイコライザーといった基本的な機能に加え、エフェクト機能(リバーブ2種類とコーラスの中から1つ選択)やチューナーなども備えています。
そして、特筆すべきが「SRT POWEREDシステム」のブレンドコントロールです。
このYAMAHA独自のSRTというのが凄くて、サイレントベースの現行モデルSLB300にも同システムが搭載されていますが、「ピエゾピックアップで拾った音」と「ボディの共鳴音をリアルにシミュレートした音」を混ぜることが可能です。
これにより、ピエゾ特有のプチプチした物足りない音に、マイク録りしたような自然な音を加えることができ、「下手にアコギをマイクで録るよりよっぽどいい音」と呼べるクオリティのサウンドを出すことができます。
これは宅録などにおいてかなり有用なものと言っていいでしょう。
サイレントギター特有の欠点
SLG200のフレームの構造はかなり良くできていると思うのですが、本物のアコギほどにはボディ厚がないことに加えて、体と接する面積が極端に少ないこともあり、安定性に欠けます。
アコギ特有の重量バランスの悪さからくるヘッド落ちも相まって、一般的なエレキギターともアコースティックギターとも異なる、座奏時の妙な弾きにくさがあることは否めません。
クラシックギター奏者が使っているような足台を導入するのも1つの手かもしれませんが、個人的に楽器を弾く時には「パッと出してサッと弾ける状態」にしておきたいという考えがあり、余計な一手間を増やすのは避けたいところです。
何らかの方法で、普通に膝に置くよりもギター本体を自分に近付ける(楽器の位置を自分から見て左上に引き上げる)ことができればベストだと考えました。
ホーン部品の位置を変える
そんなことを考えていたところ、Twitter(現X)のおもしろ楽器仲間(だと私が勝手に思っている)の方が、SLG200の高音弦側フレームにくっついているホーン部分の部品を移設していたのを思い出しました。
私は早速これを真似させてもらうことにしました。
この改造にあたっては、高音弦側のフレームをボディから外す必要があります。
元通りに戻せる簡単な改造ですが、以下、一応自己責任でということを注記しておきます。
これを外して場所をネジ1つぶん下にずらすだけです。
結果、ネジは1本余り、赤丸の箇所にネジ穴が空いた状態となります。
おそらくネジ2本でも強度面の問題はなさそうです。
と、ここで「これをひっくり返したらもっと良くなるのでは?」と思いました。
これ、衝撃的なレベルに弾きやすかったです。
もちろん好みはあると思いますが、個人的に「全てのギターは最初からこの形状であるべきでは?」と感じたレベルです。
まあ見た目はよくあるギターからかけ離れてしまいますが……
ん?
Kleinやないか!やっぱりあの独特すぎる人間工学シェイプは正しかったんや!
デメリットとして、専用ケースにも普通のギターケースにも収まりが悪くなってしまう点が挙げられますが、普段持ち運びをしない人にとっては大きな問題にならないでしょう。
この驚きを全てのSLG200オーナーに体感してほしいと本気で思います。
やってみてください。騙されたと思って。本当に騙されたらごめん。
改造していて思ったこと
無論「これがSLG200本来の姿だ!」と本気で思っているわけではないですし、先述の通り好みに合う合わないはあると思います。
ただ、この改造を簡単にできてしまうことについて、勝手にYAMAHAの心意気を感じてしまいました。
というのも、この固定ネジの3本の配置を等間隔ではなくすとか、固定ネジを2本にするとか、それだけで「ホーンの位置をずらす」という改造は不可能になるのです。
メーカー側としては当然に「これネジ1個ぶんズラせるな」ということに気付いているはずで、それの阻止策をとられてしまえば、ユーザーとしては「新規にネジ穴を開ける」という不可逆改造を余儀なくされます。
まあ考えすぎだとは思いますが、「完全な可逆改造でこんな工夫ができてしまう余地がある」こと自体に何ともいえない有難みを感じました。
気に入らなければ元に戻すだけですからね。
その他の要改善ポイント
とは言いつつ、他にも改善したい箇所はあります。
まず、市販の楽器はほぼそうですが、ナット弦高が高いことによる左手の押さえにくさが気になります。
私はナット溝の調整が自分ではできないので、これは近所のリペア屋さんに頼もうと思っています。
あと、ペグボタンがかなり小さめなのが実用面で良くありません。
ネジ固定のペグではないため、こちらは交換の際に要穴開けになってしまいますが、せっかくならプラボタンのロックペグにでもしたいところです。
このあたりは今後改装を加えた際に追記しようと思います。