【レビュー】BOSS ME-90B Bass Multiple Effects

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2024年4月、待ちに待った(人はそんなに多くないと思いますが)ベース用MEシリーズの新製品、ME-90Bが発売されました。
私は簡単操作のベース用最新マルチエフェクターを待ちわびていたので、勢いで早速購入してしまいました。
個人ブログで今時「マルチエフェクターの多様な機能を横断的に説明する」というのも薄っぺらくてつまらないと思うので、今回は個人的に期待していた機能の良し悪しや、各エフェクトセクションごとに気に入った音色を紹介します。

ME-50BからME-90Bまでの20年

まず、自分用の情報整理を兼ねて、BOSS MEシリーズについてまとめます。

BOSSのマルチエフェクターというと、「アナログ感覚で操作できる、個別のエフェクトごとにノブを備えたMEシリーズ」と、「細かいところまでエディットできる上位機種のGTシリーズ」のようなイメージがあります。
ただ、MEシリーズでも、ME-50より前の製品(というか90年代当時のマルチエフェクター全般)はノブが少なく、直感的に扱えるとは言い難いものでした。
なので、「コンパクトエフェクターのように直感的に使えるBOSSのMEシリーズ」と呼べるのは、2003年発売のME-50からということになります。

そして、ベース用のME-50Bが発売されたのが2004年です。

(↓BOSSのオフィシャル動画。作りが古い!)

その後、ギター用のMEシリーズは後継機種のME-70が2009年に発売。
さらに2014年のME-80(買った)、2023年のME-90(試奏して買うか悩んだ)と、継続して新製品がリリースされてきました。

しかし、その間ベース用のMEシリーズは、小型省略版のME-20Bが2007年に発売されたのみ。
ME-50Bの正統後継機と呼べるものは、20年間ずっと発売されてきませんでした。
ギター用の新製品が発売されるたびに「ところでBOSSさんベース用の方は?」と言い続けてきた身からすると、まさについに来た新製品ということになります。

ME-90Bの(プレイヤー的に重要な)概要

さて、ME-50Bは現在の感覚からすると「中型マルチエフェクター」ぐらいの大きさでした。
それと比べるとME-90Bはかなり大型化しているように感じます。
実際問題として、運搬には何らかのケースが必須です。

しかし、実は奥行きはほとんど変わっておらず、225mm→220mmとむしろちょっとだけ短くなっています。
横幅の変化も、384mm→443mmと約6cm長くなったに収まっており、パッと見の印象ほどバカでかくなったわけではありません。
いやまあデカいですが。

また、地味に重要なのが軽量化です。
ME-50Bが3.15kgであったのに対し、ME-90Bは大きくなったにもかかわらず2.9kgと軽くなっています。
(※ME-80は3.6kgもあった)

電源は一般的なDC9Vアダプター。
電池駆動の場合は単三4本です。
消費電流195mAというのは、機能に比してなかなか省エネではないでしょうか。

ただ、良くない点もあります。
ギター用のME-80までは、インプット・アウトプット等の端子がどこにあるのか分かるよう、筐体の天面に記載がありました。
ME-90からその表示が無くなったのは不親切だと感じます。
フットスイッチの間隔が狭く感じるのも、ライブを想定すると少々不安です。

DI機能が備わっているのはベース用ならではですが、ME-90にあるオーディオインターフェイス機能はありません。
ギター用より1万円高いのあんま納得いかないな?

PREAMP/EQ

ではここから、各セクションごとに気に入った音色を挙げていきたいと思います。

まずはプリアンプ。
個人的にマルチエフェクターのプリアンプというかアンプモデリングってそんなに好きではないのですが、これは「SILVER TUBE」がぶっちぎりで気に入りました。
Fender Bassman100のモデリングとのことです。
不必要に歪むわけでもなく、太さとゴリッとしたエッジ感のバランスが凄く良いです。

硬めの音のプリアンプとして、Gallien-Kruegerの800RBをモデリングした「SOLID STACK」も扱いやすいと思います。
他に定番アンプとしてAmpeg SVTやacoustic 360のほか、今時のマルチだけあってMarkbassのLittle Mark ⅢやDarkglass B7Kのモデリングなんかも入っています。
また、気になる人は気になるであろう、DRIVE BASSというのが「MDPによるハイゲインサウンド」とのことで、これはBB-1X Bass Driverに相当するものではないでしょうか?

COMP/FX1

今回の購入の主目的の一つだったのが、「BC-1X Bass Comp相当のコンプが入ってるならもうそれだけでOKでは?」というものでした。
M-COMPというのがおそらくそれで、「MDPによるコンプレッサー」との説明もあります。
実際、かなりBC-1Xに近い性能であると思えるコンプ感で、音色の加工感はありつつも、パッシブ6弦ベースの音量のバラつきを極めてナチュラルにまとめ上げてくれます。

BC-1Xほどギチギチのキュッ!とした音にはならないと感じますし、コントロールが3ノブなのも「かゆいところに手が届かない」と感じる人はいそうですが、BC-1X同様、1つのノブを動かすことで複合的に様々なパラメーターが動いているように思えます。
個人的には「コンプはこれで十分」というレベルを満たしています。

オクターブ類は…旧機種よりは当然進化してるけど、そこまで良いものとは思わないかな…
ただオクターブ上ピッチシフトの、ともすればヒステリックな質感は、これはこれで使い出がありそうな気もします。
ハマる人はいると思います。

FILTER/FX2

このセクションは使えるエフェクトが多い!

まずENV FILTERがMu-Tron Ⅲ(のローパスモード)のモデリング。
T.WAH LPFとT.WAH BPFもエンヴェロープフィルターで、ローパスとバンドパスとなっています。
よくあるエンヴェロープフィルターだと、バンドパスはもうギター用というか低音の量感が足りなかったりしますが、これはそれぞれに個性があってどれも良いです。

OVERTONEも良い。
個人的にはMO-2 Multi Overtoneの単体機の音よりこっちの方が好みです。
一発でパイプオルガンの音が出せます。

ENHANCER、積極的には使わないけど久々に鳴らすと面白い。
こういう「今更コンパクトで買おうとは思わないけど…」なものが入ってるのもマルチのいいところです。
コンプとの重ねがけで、打ち込みばりにディンディンのベースサウンドになります。

ただ、個人的にこだわりたいボリュームスウェルエフェクト、SLOW GEARは残念ながら完全に期待外れでした。100点満点中7点。
かなりゆっくりしたフレーズにしか追従してくれず、「エレハモの足元にも及ばない」というレベルにすら達していません。

そこに関してはまあボリュームペダルがあるしいいか…と思ったんですが、そこにも別の罠がありました(後述)。

MOD

モジュレーションのセクション。
この中で使うとしたら個人的にはコーラスぐらいです。
「MONO」「STEREO」「CE-1」の3タイプから選択でき、CE-1のモードが一番重層感があって好みでした。

あと、モジュレーションの中にスライサーが入ってるのが今時だなあと感じます。

ただ、このMODセクションはフットスイッチが2列に並んでる奥側を踏まないといけないんですよね。
マニュアルモードで使う前提だとちょっと使い勝手が悪いです。
個人的な好みですが、コンプは基本かけっぱなしにするので、フットスイッチの配置は「MODが手前、COMP/FX1が奥」だと嬉しかったですかね。

(※このMODセクションにも3種類ですがコンプが入っているので、モジュレーションエフェクトを使わない前提であれば、ここにコンプ機能を割り当てるのもありです。)

BLEND

ベース用ならではの機能として、独立した原音ブレンドノブが備わっています。
マニュアルモードで使うぶんには運用が難しいのですが、メモリーモードでプリセットした音色を切り替えて使う人であれば、これによって音作りのバリエーションが大きく広がるのではないかと思います。
BLEND用のフットスイッチがDRIVEのフットスイッチの真上にあるというのもなかなか考えられています。

DRIVE/SYNTH

歪みとシンセのセクション。

これはもうMUFF FUZZです。
手が勝手に動いてMUSEのNew Bornを弾きました。中年なので。
高音域のバリバリ感からして、ベースに人気のロシアンマフ系のモデリングではなくUSAマフの系譜かな?と思ったのですが、具体的な元ネタは不明です。
一般的なビッグマフの挙動とは異なり、TONEを上げても低音があまり削られないので、オリジナルの要素もあるのでしょう。

あとはSYNTH SAWも気に入りました。
SYB-5 Bass Synthesizer亡き今、こうして手軽にベースシンセの音が出せるのも嬉しいです。

DLY/REV

空間系エフェクトのセクション。
これはまあそんなにこだわりは無くて、DELAY+REVERBが贅沢な残響でいいなあ、という感じです。
あとSHIMMER、シマーリバーブが面白い。

音作りをマルチエフェクターのみで完結させるメリットとして、「空間系の処理が楽」というのがあります。
コンパクトエフェクターの組み合わせだと、ディレイやリバーブの残響音の味付けが前段の音作りを邪魔してしまったり、残響音が重厚すぎると組み合わせによって音が歪んでしまったりすることがあるのですが、マルチ単体での内部処理だとそういうことが起こりにくいので、悩む要素が少なくて済みます。

PEDAL FX

エクスプレッションペダルです。
ワウやペダルピッチシフトのほか、BLENDノブで設定した値まで原音を混ぜる操作もこのペダルで可能です。
エフェクトオフ時にはボリュームペダルとして機能します。

期待していたけどダメだったのがこのペダルピッチシフトなんですよね。
復刻された現行のBass Whammy発売がもう10年前になるのですが、あのキビキビした追従性の良さや低音域の反応速度とは似ても似つかないです。100点満点中23点。
「やっぱりマルチのペダルピッチシフトはまだまだダメだな」と感じてしまいました。

そして何より残念なのが、ボリュームペダルとして使おうにも接続順がよろしくない点です。
MEシリーズは各ペダルの接続順が自動的に最適化されるようになっており、その代わりユーザー側で任意に変更することができません。
で、PEDAL FXは通常DLY/REVよりも手前に入っているのですが、ボリュームペダルとして使うときは勝手に空間系の後ろになってしまうのです(メーカーにも確認済み)。
その結果、足元でボリュームを切るとディレイの残響音までバッサリ消えてしまうため、ボリューム奏法的には非常にまずい。
これはかなり残念でした。

チューナー

MEMORY/MANUALの切り替えフットスイッチ長押しでチューナーが起動します。
チューナーはONにすると音が出なくなるのが初期設定ですが、システム設定で音を出しながらチューニングするようにも変更できます。

このチューナーが予想に反してめっちゃ良い。
下手なチューナー単体機でももっと低音の反応が悪いやつありますよ。
さすがに超絶反応速度というわけではないですし、ディスプレイはだいぶ見辛いですが、チューナーとしての機能は十分に果たしてくれます。

おすすめの設定変更

好みにもよりますが、システム設定の機能で出荷時の状態から変更した設定が2つあるので紹介しておきます。

①チューナーの音出し設定

1つは、先ほどのチューナーの項目で書いた、「音を消してチューニングする」から「音を出してチューニングする」への変更です。

「チューニングのときは絶対に音を鳴らしたくない」という人はそのままでもいいのですが、特に多弦ベースにおいては、「低い音をチューナーが拾いきれず、結局ハーモニクスを鳴らして耳で合わせる必要がある」というケースが多いです。
チューナーまでマルチで完結させるなら、音が出るようにしておいたほうがスムーズだと個人的には思います。
ボリュームペダルで音消せますしね。

②モード切り替え時の音色引き継ぎの設定

そしてもう1つが、「メモリーモードからマニュアルモードに切り替えたときに、現在の各ノブの設定を反映する」ように変更しておくことです。

これも、メモリーモードで使う人なら工場出荷時の「メモリーモードで保存した音をマニュアルモードに引き継ぐ」という初期設定のままで問題ありません。
音を作り込んでプリセットに保存するなら、そのままの方が使い勝手がいいです。

しかし、常にマニュアルモードでコンパクトエフェクター的に運用する場合は、この初期設定のままだと「出したい音が出ない」というトラブルが発生してしまいます。
というのも、ME-90Bは電源をONにするとメモリーモードで起動するため、使いもしない「ユーザー1」のプリセットが電源投入時に勝手に選択されます。
初期設定の状態だと、このあとマニュアルモードに切り替えても「ユーザー1」の音色が維持され、ノブで設定した通りの音は出ません。
「各ノブをちょっと触らないと、意図した音(ノブの見た目通りの音)が出せない」という面倒が生じてしまうのです。

メモリー機能を使わずにアナログ的な使い方をする人は、この設定も変更しておきましょう。

総評

というわけで細かく見ると不満点もありますが、「ベース用コンパクトエフェクターの集合体」としては十分すぎるほど遊べるものでした。
やっぱりこう、物理ノブをグリグリ回して音を作るのはそれだけで楽しい、エフェクターがたくさんあるともっと楽しい、でもコンパクトエフェクターを何台も買い揃えるほど金はない(切実)という向きには非常に適切なチョイスと言えるのではないかと思います。

当然ながら初心者には非常におすすめですし、出戻り再開中年プレイヤーにもいいと思います。
個人的にも「もうこれでいいんじゃないかな」という感じです。

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