私は以前から「ノブやボタンが少ない多機能マルチエフェクター」に苦手意識があります。
そんな私でも直感的に操作できる分かりやすいマルチエフェクターが、アナログエフェクターのように多くのノブを備えたBOSSのMEシリーズです。
今回、久々のMEシリーズ新製品として「ME-90」が発売されたので、試奏してきました。
普段あまり「試奏しただけのもの」について記事を書くのはやらないようにしているのですが、今回はかなり買おうか迷った末に買わず、正直今も迷っているぐらいの状態なので、ベーシスト目線での感想を記録として残しておこうと思います。
過去に所有していたMEシリーズ
私は以前、ベース用のME-50Bを使用していたことがあります。
2003年発売のME-50Bは3つのフットスイッチを備え、(現在の感覚でいうと)中型マルチエフェクターぐらいのサイズ感でした。
長年販売されたものの、1年半ほど前に公式サイトに「販売終了」の表示が出ていました。
2023年8月現在、ベース用MEシリーズの後継機種は存在していません。
また、ギター用マルチエフェクターであるME-80も所有していました。
ギター用のMEシリーズは、ベース用とは違って定期的に新製品が発売されており、ME-50からフットスイッチ4個のME-70を経て、2014年にME-80が発売。
フットスイッチを前段後段の2列に分けるという構造により、フットスイッチは8個と一気に増え、多機能化とともに大型化しました。
ME-90は、前モデルであるME-80と見た目が似ていますが、従来のCOSMに代わって上位機種で採用されたアンプシミュレーション技術「AIRD」を搭載しており、正統進化版と言えるでしょう。
なお、これまでのMEシリーズは進化の度に重量も重くなっており、ME-50で3.15kgだったのが、ME-70で3.5kg、そしてME-80では3.6kgにまでなりました。
しかし、今回のME-90は軽量化により重量3kgを切って2.9kgとなっています。
では以下、比較は記憶頼りではありますが、これまでに使ったことのあるMEシリーズの使用感も踏まえながら、試奏時に感じた感想を書いていきます。
※短時間での試奏につき全ての音色を試したわけではありませんし、セッティングを詰めたわけでもない簡易的なレビューである点にご留意ください。
PREAMP
まず、プリアンプのセクションです。
これに関しては当然ながら完全にギター用アンプのモデリングなので、ベースで扱いやすいものでは全くありません。
ベースで使うなら基本的にOFFでしょう。
ただ、スタックアンプのモデリングでGAINを上げると、通常の歪みエフェクターやOD/DSセクションでの音作りでは到達できない生々しいディストーションサウンドを得ることができます。
なので、歪みエフェクターの一つとして活用するならアリだと思いました。
なお、AIRDによるアンプモデリングは確かになかなかリアルだと感じる一方、従来からのBOSSマルチにありがちだった、高音域が籠って音が引っ込むような感じも依然としてあるように思えます。
ただまあこれは小さいベースアンプで鳴らしていることの悪影響も多分にあるでしょう。
ここは適切な環境で試せばまた評価が変わってくるかもしれません。
また、試奏では試せなかった機能として、BOSS TONE STUDIO for ME-90を用いたエフェクトの差し替えができる点に留意する必要があります。
PREAMPセクションでは、本体記載のもの以外に、TRANSPARENT、BOUTIQUE、SUPREME、JC-120、DELUXE COMBOという5種類が使用可能です。
このうちのTRANSPARENTは「周波数レンジが広い、非常にフラットな特性のアンプ」とのことなので、ベースに最適なアンプモデリングである可能性があります。
COMP/FX1
このセクションでは、コンプレッサー、タッチワウ(オートワウ)、オクターブ、スローギアの機能を試しました。
コンプレッサーは「どうせベースにかけたらパツパツのスカスカになるんだろ」と正直あまり期待していなかったのですが、意外にも健闘。
やや低音が削がれますし、自分が理想とする自然なコンプサウンドとはいきませんが、弦ごとの音量差を一定程度抑えつつ、それなりにナチュラルといえる範囲内の音色だと感じました。
タッチワウとオクターブに関しては、前機種のME-80で「効くのが高音域すぎてベースでは全く使い物にならない」という苦い思い出があります。
しかし、タッチワウはやや深めの効きにチューニングされたのか、エグい音はさすがに出せないものの、ベースでも十分使える領域に達していました。
一方オクターブはやはりギターの音域を前提にしており、ベースの低音域ではかなり苦しい結果でした。
スローギアに関しては、自分にとってのリファレンスであるエレハモPOG2のボリュームスウェルには遠く及びませんでした。
なお、このセクションのエフェクトはBOSS TONE STUDIOでD-COMP(ダイナコンプ)、RING MOD(リングモジュレーター)、 POLY OCTAVE(和音対応オクターバー)、T.WAH DOWN(逆向きのオートワウ)、Single>Hum、Hum>Single(ギター用のピックアップ変更シミュレーター)に差し替えできます。
こうなるとPOLY OCTAVEの低音域での挙動が気になりますね。
OD/DS
このセクションはいずれもギター用歪みエフェクターの範疇なので、あまり時間をかけて試してはいないのですが、ビッグマフ風のMUFF FUZZはなかなか悪くないボフボフ具合でした。
BOSS TONE STUDIOで入れ替えできるのはCLEAN BOOST、TREBLE BOOST、OD-1、TURBO OD、GUV DS、‘60S FUZZ、OCT FUZZの7種類です。
MOD
MODセクションのエフェクトは、個人的に重要度の高いコーラスと、ピッチシフトを試しました。
ME-80のコーラスはかかる帯域がギターの高音域に寄っていて、ベースだとほとんど音揺れを感じることができませんでした。
EQ/FX2のセクションにも入っているもう一つのコーラスと同時掛けして、ようやく効果を体感できるレベルでした。
しかし、ME-90では低音域まで揺れるようになっており、ベースでもコーラスの効果を得られるようになっています。
ピッチシフトに関してはやはり先のオクターブと同様で、ギターの音域より下になるとほとんど用をなしませんでした。
このセクションのエフェクトは、BOSS TONE STUDIOでSCRIPT PHASER(MXR Phase 90のモデリング)、STEREO CHORUS、CE-1 CHORUS、AUTO WAH(演奏に反応するのではなく自動で周期的に開閉する方のオートワウ)に入れ替えができます。
DELAY
ディレイセクションは簡単にしか試せていません。
TERA ECHOを試奏し損ねたのは痛恨の極みです。
エフェクトの入れ替えは、CHO+DELAY、WARP、TWIST、GLITCHと、飛び道具系が充実しています。
PEDAL FX
ワーミー系の音色として+2 OCTを試しました。
ME-50Bの頃にはペダルピッチシフトの追従性が非常に悪かったと記憶していますが、それと比べると別物レベルに滑らかに進化しています。
ME-80と比べても、体感的にペダルの動きとピッチの変化がリニアについてきていると感じました。
しかし、やはりベースの低音域だと全く思うようにはいかず、Bass Whammyには遠く及ばないというのが正直なところです。
なお時間の都合もあり、EQ/FX2とREVERBのセクションは試せていません。
EQ/FX2はFLANGER、VIBRATO、PITCH SHIFT、HARMONIST、ROTARY、UNI-V、OVERTONEに差し替え可能です。
総評
全体的な感想としては、先代機種であるME-80と比べると「思った以上にベースでも使える」と感じました。
正直、やはりあくまで「そこそこ使える」の領域ではあります。
しかし、新品価格4万円強で「何台もコンパクトエフェクターを並べるのと同じように遊べる」と考えれば結構アリかと思います。
最近の若い方にとっても、「まずエフェクターの操作に慣れる」という観点からすると非常に扱いやすいものであるのは間違いないので、初心者にこそオススメと言えかもしれません。
今後エフェクトの着せ替え機能がベース用にも対応することに期待したいですね。
どうしようかなあ(まだ買うかどうか悩んでいる)
【後日追記】
ME-90B発売!即購入!!