現時点におけるBOSSの小型ギターアンプ最新機種です。
この手の製品としては珍しく、「ギターでもベースでも使える」と公式に明言されています。
「巷の自宅練習用ベースアンプには大きな欠点がある」と考える自分としては見逃せなかったので、近場で在庫があった機会に購入してみました。
自宅練習用ベースアンプに求める最低条件
私はこれまでいくつかの練習用アンプを所有してきましたが、その中でも気に入っていたのが、VOXのギターアンプであるMINI5 Rhythmです。
出力切替が可能で、スピーカー口径は6.5インチ(約16.5cm)、重量は3.5kg。
ベース用のモードは備えていませんが、私はこのMINI5のLINEモード(歪みのない純粋なクリーントーン用のモード)でベースを鳴らしていました。

なぜいわゆる「練習用ベースアンプ」ではなくギターアンプを使っていたかというと、「自宅練習用」とされるベースアンプで満足な音の出るものは、音が大きすぎるうえに重すぎるのが欠点だと考えていたためです。
軽くて運びやすいというのは、自宅での練習には意外と重要です(10kg超えのベースアンプなんか部屋にポンと置くには不便すぎる!)。
そりゃしっかり低音を出してこそ「タッチで弦ごとの音量を揃える」「ピッキングで芯のある音を出す」という技術を身に着ける練習になるのですが、実際問題として、多くの日本人の住宅事情では、自宅でボンボン低音を出すわけにはいかないんですよね。
また、小型ベースアンプによくある10Wや20Wといった出力のアナログ回路のアンプは、最低音量でも音がでかすぎて、自宅練習レベルの小さい音が出せないケースがあります。
「ちょっと音が大きいな、あと少しだけ音量を小さくしよう」とボリュームを絞ると音が消えるなんてのは自宅練習量アンプとして失格です。
「アンプを繋ぐと最小音量でも音が大きすぎるので、自宅練習でなるべく小さい音を鳴らすような弾き方をする癖がついてしまった」となればプレイへの悪影響でしかありませんから、自宅で練習用のアンプとして使うのであれば、実用的な範囲で小さい音量を細かく調整できることが必須となります。
しかし、「小さい音でボリュームを細かく調整できる」と「最低限ベースらしい低音を鳴らせる構造をしている」を兼ね備えた安いアンプというのは、案外なかなか無いのです。
KATANA-MINI Xの自宅練習アンプとしての優位性
そんな中、2024年12月に発売されたBOSSの新商品が「KATANA-MINI X」です。
ギターアンプということもあり、私は当初ノーチェックだったのですが、ベースにも使えるモードがあると公式に明言されていることを知り、購入してみました。
BOSSの新商品は発売直後に品薄になることが多いですが、こちらも本記事作成時点で流通在庫はかなり少ないようです。
エンクロージャーは樹脂製ではなく木製で、5インチのスピーカーを搭載。
重量は2.7kgで、片手で軽々持ち上げられる重さでありつつ、シールドに引っ張られただけで転ぶほど不安定でもない(重要)です。
先述のVOXアンプより一回り小さいサイズ感です。
実際使ってみて何より嬉しいのが、細かい点ですがコントロールが正面に配置されていることです。
天面にコントロールがあると、演奏しながら触るのに不便なんですよね。
音を出すときはスピーカーの前に座るわけですから。
給電用のUSB端子も同じく前面にあります。
充電式バッテリーが内蔵されているため、電源コードを繋ぐわずらわしさがないのが非常に良いです。
また、初めに書いた「自宅練習用ベースアンプは近所迷惑にならない程度の小音量が出せない」という問題もクリアしています。
「0からつまみを上げていくと特定のポイントでいきなりデカい音が飛び出す」ということがありません。
実用的な範囲の小音量で細かい音量調整が可能というだけで、市場に存在する多くの練習用ベースアンプの上を行っています。
KATANA-MINI Xのベースサウンド
KATANA-MINI Xは、BROWN、CRUNCH、CLEANという3つのモードを備えており、各モードともVARIATIONスイッチのON/OFFで音色を切り替えることができます。
CLEANモードのVARIATIONスイッチONで、「エレアコギターやベースも使用可能」というモードになるのですが、これが凄い。
「小さなアンプからとは思えない腰のある低音」と書くと雑誌の嘘臭いレビューみたいですが、本当にそうで、指の当て方に機敏に反応してエッジ感やローミッドの太さが変化する感じはまさに「ベースアンプ」です。
(VARIATIONスイッチOFFのギター用クリーンモードだと、タッチの差にさほど影響されない、悪く言えば平坦な音がします。)
イコライザーは穏やかな効きで、大きく音色を変えるタイプではなく、例えばアホみたいなドンシャリにはできません。
また、エフェクトはベースに使っても結構遊べますが、オートワウやギターシンセ(そう!シンセが鳴らせる!!)はあくまでギターの周波数帯に合わせてあると感じます。
そして当然ながら、口径の大きいスピーカーを搭載した高剛性のキャビネットと比べてしまえば正直「迫力の足りない音」ではあります。
とはいえ、「小型軽量で電源も気にせず机の上にポンと置ける」「小さい音で鳴らせる」という特徴により、目の前にこのアンプを置いて練習できるというだけで、エレキベースの練習環境としては「楽にまともな環境が構築できる」と言えるのではないかと思います。
先に書いた通り、世の中のベースアンプの多くは「小型」と言いつつも図体も音も不必要にデカいです。
そのせいで変に優しく弾く癖がつく方が本当に良くありません。
日本の住宅事情に配慮した製品として、さすがによく出来ていると感じました。
エクストリームメタルまでいけるハイゲインディストーション
そして、ギターを弾くぶんにもディストーションチャンネルが非常に良いです。
先述の通り、KATANA-MINI Xのディストーションチャンネルは「BROWN」と名付けられています。
温かく粘りのある、いわゆるブラウンサウンド。
「弾きやすい」そして「弾いていて楽しい」音色にチューニングされています。
これは先行の下位機種であるKATANA-MINIから踏襲されたサウンドです。
ただ、GAINフルテンでもザクザクのハイゲインディストーションには到達しません。
ここでVARIATIONをONにすると、モダンハイゲイン的なメタルディストーションに切り替わります。
これにより、自分のデスメタル曲を弾くにも十分なレベルに歪ませることが可能です。
こうした音色のバリエーションを含め、パッと見ただけで理解できる範囲内に、実用的な音色を多数備えた練習用アンプという印象を受けました。
リズム機能はついていませんが、今時スマホのアプリでも十分に高機能なメトロノームがあるわけで、無理にアンプに内蔵する時代でもないのでしょう。
総じて「現代的な機能性」と「説明書不要の使いやすさ」を兼ね備えたアンプだと思います。