メタルファンの端くれとして、「珍メタル」についての個人的メモを残しておきたくなりました。
せっかくなので適当なレビューとともにインターネットの海に放流します。
暇な方はお付き合いいただければと思います。
- 「珍メタル」をどう定義するか
- NINJA MAGIC / The Way of Life
- JUDAS PRIEST / Breaking The Law
- KORPIKLAANI / Wooden Pints
- KALEDON / The New Kingdom
- DEAD TO FALL / Chum Fiesta
- SEX MACHINEGUNS / みかんのうた
- ANGEL HEART / Desire Love
- GRAILKNIGHTS / Moonlit Masquerade
- TWILIGHT FORCE / Dawn Of The Dragonstar
- RISE OF THE NORTHSTAR / Here Comes The Boom
- FREEDOM CALL / Metal is for Everyone
- VICTORIUS / Super Sonic Samurai
- GLORYHAMMER / Gloryhammer
- ANGUS McSIX / Laser-Shooting Dinosaur
- NANOWAR OF STEEL / Barbie MILF Princess Of The Twilight
- HEVISAURUS / 100
「珍メタル」をどう定義するか
「珍メタル」という単語が何を指すかは、人によって、また世代によってかなり異なるでしょう。
私個人としては、この単語を認識したのがゼロ年代後半のニコニコ動画だったので、やはりその頃に知ったものをイメージします。
基本的には文字通り「珍妙なメタル」を指し、当時のそれは多くの場合、海外のややマイナーなバンドでした。
私より少し上の世代だとX(X JAPAN)、もっと上なら聖飢魔Ⅱあたりも最初は珍妙な存在だったのでしょうが、私が音楽に目覚めた時点で既に人気バンドだったこれらを珍メタル扱いするのは個人的に違和感があります。
KISSでさえ最初はイロモノだったわけですし、SLIPKNOTやBABYMETALなんかも、世に出るタイミングが違えば今の地位にはいなかったでしょう。
また、シンフォニックメタル系のバンドの多くは、本人が真面目にやっているとしても世間的にはかなり珍妙に映るはずです。
なので今回は、ある程度主観による取捨選択をしつつ、ゼロ年代後半~最近のおもしろメタルの隆興を反映したセレクトを中心にお送りしたいと思います。
つきましては、「ちょっとPVがふざけてる」程度のもの、意図的に狙っているパロディ路線のもの、単に予算不足っぽいもの等はキリがないので基本的に割愛します。
ではまいりましょう。
NINJA MAGIC / The Way of Life
YouTubeが世に出たのが2005年、そしてこの動画の投稿が翌2006年。
NINJA MAGICこそ、今でいう「ネットでバズった」メタルバンドの始祖と言っても過言ではないでしょう。
ネタが通じるメタラーの集まりであれば、最初のモノローグ冒頭の「My son」だけで笑いが起こる超有名曲です。
異常にハイテンションな動き、妙にミックスがデカいボーカル、バカみたいな歌詞。
「忍者装束は闇夜に隠れるために黒いのに雪原で着たら意味がない」という突っ込みどころまで含めて珍メタルの金字塔。
(※↓埋め込み無効のためクリックしてYouTubeで視聴してください)

JUDAS PRIEST / Breaking The Law
超大御所のメタルゴッドをこの文脈で持ち出すのは今回の趣旨から逸れるのですが、やはりこれを紹介しないわけにはいかないでしょう。
私が「ジューダスプリーストのPVでクソダサいのがあるらしい」と知ったのは中学生の頃でしたが、当時は動画どころか「ネットで調べ物をする」ということ自体まだハードルが高く、田舎の中坊にはどんなものか全く謎だったのです。
正直、その存在を疑ってさえいたので初めて見たときは感動しました。
すげえ!本当にギターで銀行強盗してる!
インターネットが発達した今の時代、これを知っておくことはメタラーの義務教育と言えます。
KORPIKLAANI / Wooden Pints
今でこそ「フォークメタル」や「ヴァイキングメタル」と呼ばれるサブジャンルは一定程度知られていますが、2005年には全く一般的ではありませんでした。
そんな当時において、このスネアの音ともに切り株に斧が刺さったと思ったら汚い小屋からデカい奴がヴァイオリンを腹に当てて弾きながら出てくるというPVは相当な破壊力でした。
日本盤に書かれた「森メタル」という謎のジャンル、「酒場で格闘ドンジャラホイ」等の無茶苦茶な邦題に頼らずとも、この映像に初見で耐えられた人は少ないと思います。
なお注記しておきますが、先入観を捨てて音だけ聴くと、このヴァイオリンは哀愁があってかなりかっこいいのです。
KALEDON / The New Kingdom
「無駄に仰々しい荘厳な曲調」「よく分からないけど中世ヨーロッパ的な世界観」「何故か森の中で演奏(当然アンプは無い)」などの要素だけなら、まあメタル業界ではあるある程度です。
しかし、イタリアのKALEDONのこのPVは、そこに「満を持して登場するボーカルの見た目が全然メタルっぽくない」、さらに「もっこりが気になる」というプラスアルファの特徴を武器に殴りこみをかけてきました。
無理矢理なテンポチェンジに加え、ボーカルの高音域が絶妙に危ういのもポイント。
あと「物件紹介メタル」みたいな呼び方もされてましたね。見たら分かります。
DEAD TO FALL / Chum Fiesta
「ちょっとふざけてみました」的なPVはメタルに限らず多く存在しますが、他とは違う方向に振り切ったことで話題になったのがこちら。
海です。海メタル。
「珍メタル」じゃなくて「珍PV」系はキリがないのでこれで終わりにしますが、でもやっぱりこれは笑う。
ちなみにビニールのサメとじゃれて遊んでるようなシーンがありますが、これは「サメに食い殺される」という表現であり、実際最後にボーカルが死にます。
SEX MACHINEGUNS / みかんのうた
個人的にSEX MACHINEGUNSを珍メタル扱いするのは違うと思っています。
日本で最もヘヴィメタルが低迷していた2000年前後、メタラーであることを隠して思春期を過ごしたのは私だけではないでしょう。
そんな状況において、本格的な若手メタルバンドとしてメジャーフィールドで唯一気を吐いていたマシンガンズには尊敬の念さえ抱いています。
多くの人からコミックバンド扱いされていようが、十代の私の心を支えてくれたのは彼らの音楽なのです。
でもやっぱりここで紹介しないのもおかしいので載せます。
これが珍妙じゃなかったら何だ。
ANGEL HEART / Desire Love
ヴィジュアル系もメタルも下火だった時期に、V系のルックスでメタルっぽい曲をやったような感じのバンドは、今改めて見ると「珍メタル」とカテゴライズできるかもしれません。
が、そんなバンドが束になっても勝てない衝撃を放ったのが韓国のバンド、ANGEL HEARTでした。
そこそこのクオリティで作られたPVに対し、あまりに打ち込み丸出しのドラム、明らかに音と合っていない演奏の動き、それを抜きに聞いても全然上手くないギターソロ、そして空耳歌詞まで含めて一級クラスの珍品です。
YouTubeにも動画がありますが、ここはやはりニコ動の方を載せておきます。
コメントONでお願いします。
GRAILKNIGHTS / Moonlit Masquerade
ドイツのスーパーヒーローメタルです。
「あー最近そういうのいるよね、知ってる」と思ったそこのあなた、GRAILKNIGHTSは2002年からやってるまあまあのベテランやぞ。
2018年の5thアルバムでついに日本盤がリリースされ、2020年1月には初来日も果たしました。
こちらは日本で彼らが有名になるきっかけになったPVで、現リーダーの緑は当時と髪型が随分変わってしまったものの、今はもっと衣装に予算がかかっています。
TWILIGHT FORCE / Dawn Of The Dragonstar
シンフォニックメタルの最前線、文句なしにハイレベルなバンドであるものの、メタルに興味のない人が見たら「これマジでやってんの?」という顔になる筆頭格がTWILIGHT FORCEでしょう。
徹底的に練り込まれた世界観からは、その本気度が伝わってきます。
なお、前任Voであったクリレオンことクリスチャン・エリクソンの脱退劇には、「クリレオンは暗黒の魔法によって精神が欲望に覆われ、エメラルドの王位を剥奪されたのだ」みたいなバンド側の公式声明とは裏腹に実際は1行のテキストメッセージで解雇されたという素敵な裏話があります。
これ込みで珍メタル認定です。
RISE OF THE NORTHSTAR / Here Comes The Boom
「日本のマンガへの愛が溢れまくっているフランスのバンド」とだけ聞くと、何というか秋葉原オタクカルチャー的なものを連想しそうですが、漫画は漫画でも北斗の拳にルーキーズにスラムダンクです。
かつてクロスオーバーと呼ばれたメタルとハードコアのミクスチャーをより現代的な形で提示したそのサウンドは、バキバキに縦の揃ったタイトさと、売れ線メタルコアバンドとは次元が違うハードコア由来の突進力が見事に同居しています。
ただ0分53秒、それは天地魔闘の構えと違う。
FREEDOM CALL / Metal is for Everyone
「メタルはみんなのもの」という珍妙な訳詞でバズってしまった一曲。
いや、でも一度聴いてしまうとこれ以上の日本語訳はないですし、メタラー的にはPVも(ギターから手を離して歌っているときのヘッド落ちが酷すぎる点を除けば)アツい仕上がりで、ガッツポーズの快作です。
しかし冷静になってみるとやはり「メタルはみんなのもの 法よりも強い」という歌い出しは普通に人生送ってたら出てこない。
VICTORIUS / Super Sonic Samurai
2020年1月リリース、ヴィクトリアスの5thアルバム「スペース・ニンジャズ・フロム・ヘル」収録の一曲「ス-パー・ソニック・サムライ」!
ハイテクノロジーから生まれた殺人兵士!ジェットパックの力で空に飛び立て!
レーザーのカタナを空高く掲げよ!あいつがスーパーソニックサムライ!
※このアルバムは好きすぎて単独記事も書きました↓

GLORYHAMMER / Gloryhammer
西暦992年、ファイフ王国の後継者であるアンガス・マクファイフはハンマー・オブ・グローリーを操り、暗黒魔術師ザーゴスラックスを封印した。
(1stアルバム「Tales from the Kingdom of Fife」)
しかしその1000年後、不浄なる混沌魔術師教団がザーゴスラックスの復活を目論む。
アンガス・マクファイフの末裔であるアンガス・マクファイフ13世はアストラルハンマーを手に立ち上がり、宇宙空間で戦いを繰り広げたのだった。
(2ndアルバム「Space 1992: Rise of the Chaos Wizards」)
その後ワームホールを通ってザーゴスラックスが支配するパラレルワールドに来てしまったアンガス・マクファイフ13世だったが、その世界ではハンマーの力が使えない!
このパラレルワールドで闘うには、太陽まで行ってハンマーにパワーを注入しなければならないのだ!
(3rdアルバム「Legends from Beyond the Galactic Terrorvortex」)
ANGUS McSIX / Laser-Shooting Dinosaur
↑のGLORYHAMMERから解雇されてしまったボーカルのアンガス・マクファイフことトーマス・ウィンクラー。
驚いたことに、彼の本業はスイスでの法律事務所経営だったそうなのですが、メタルミュージシャンとしての欲求は抑えられなかったのか、GLORYHAMMERの物語の続きをアンガス・マクシックスとして継続するという形で新バンドを結成しました。ええんか?
このバンド、プロデューサーとしての実績もあるORDEN OGANのセバスティアン・レバーマンが曲作りにおいて大きな貢献をしているようで、下手すりゃ本家よりキャッチーなメロディが印象的なのですが、それ以上に世界観がやりたい放題です。
「アンガス・マクシックス・アンド・ザ・ソード・オブ・パワー」というアルバムタイトルやら、ハンマー放り投げて手に入れた新しい武器がエクスカリバーと6をもじってシックスカリバーやら、しまいにこのアニメMVの曲ではレーザー砲で武装した恐竜とともに闘い…
それ前にVICTORIUSがやったやつとネタ被っとるやんけ!
※なお、GLORYHAMMERでは後任ボーカリストのソゾス・マイケルがアンガス・マクファイフ役を継承し、あっちはあっちで続編をやっています。
【追記】
2025年1月、なんとトーマス・ウィンクラーの脱退が発表。
どうするのかと思ったら「アンガス・マクシックスの兄弟であるアダム・マクシックスが新たにボーカルを務める」という筋立てで、新ボーカルにサム・ナイマン(MANIMAL)が加入しました。
NANOWAR OF STEEL / Barbie MILF Princess Of The Twilight
「狙ってやってるパロディ」は除外するつもりだったのですが、やりすぎを極めた存在としてイタリアのNANOWAR OF STEELを紹介しておきましょう。
バンド名は見ての通りMANOWARのパロディ、そしてロゴに雑に書き加えられた「OF STEEL」はRHAPSODY OF FIREのパロディです。
おすすめしたい曲は他にもあるのですが、今回はそのラプソディーの楽曲スタイルを徹底的にパロった上に徹頭徹尾ふざけ倒した歌詞を乗せたこちらをチョイス(MILF…Mother I'd Like to F**kの略、「ヤりたくなっちまう熟女」というスラング)。
まさかのゲストボーカル、ファビオ・リオーネ本人です。同郷だからって引き受けるのかよ。
HEVISAURUS / 100
最後に現代着ぐるみメタルの最高峰としてこちらを。
メタル大国フィンランドで放送されている子供向け番組のキャラクターによるバンドです。
「おかあさんといっしょ」の人形劇でチョロミーとムームーとガラピコがメタルやってるみたいなもんです(※これは各自の世代でじゃじゃまる・ピッコロ・ポロリでも何でも想像してもらったらよろしい)。
よく見たらギターがKREATORのミレ・ペトロッツァモデルなところまで最高なのですが、中でもこちらは100曲目(!)を記念し、フィンランド勢を中心に多くの有名メタルミュージシャンがゲスト参加した一曲。
ギターソロはこれだけで一冊教則本が書けそうなレベルなので、ギタリストの方は是非。
というわけでひとまず以上です。
「アレが入ってない」的なご意見もありそうですが、あらかた珍メタルのリストアップはできたのではないかと思います。
今後ももっと珍妙なのが出てきてくれたら嬉しいですね。