CYNIC「Evolutionary Sleeper」に学ぶSean Reinertのツーバス左足スタート奏法

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【2020/1/26追記】Sean Reinertが亡くなりました。彼の革新的な演奏が少しでも多くの人に届きますように。R.I.P.

私はCYNICが好きで、中でも2008年の復活アルバム「Traced in Air」は一生に一度レベルの超名盤だと思っています。
ベースが再録されたリミックス盤「Traced in Air Remixed」も先日リリースされましたが、そういえばこれに関連して「機会があれば何かにまとめておこう」と数年前から考えていたネタがあったので、Traced in Air収録の名曲「Evolutionary Sleeper」のドラムパターンの凄さについて語ってみようと思います。

左足スタート必須のフレーズ

メタルが好きなら、ドラマーでなくてもツーバスの練習をしたことがある人は多いでしょう。
一般的なバスドラムの両足連打パターンであれば、キックの連打は右足スタートで、基本的に「右足の動き」は「シンバルを叩く右手の動き」とシンクロします。

それに対し、フレーズの自由度を上げる・リズムの安定性を向上するために有効だと昔から言われているのが、手の動きはそのままでツーバスの連打をあえて左足からスタートするという練習法です。
で、「これって実際に活用する場面があるのか?」と以前は思っていたのですが、Evolutionary Sleeperのドラムパターンにはバスドラムの連打を左足リードで踏まないと不可能なフレーズが出てくるのです。

では当時のドラマーだった(※2015年にバンドを離脱、2017年正式に脱退)Sean Reinert本人によるプレイスルー動画を見てみましょう。

0:24あたりからスタートする演奏でハイハットシンバルに着目すると、表拍の8分音符をずっと刻んでいるのが分かります。
これがすなわち、ツインペダルによるバスドラムの16分連打を左足からスタートし、左足キックペダルとハイハットのペダルを同じ足で同時に踏んでいるということです。

そして、この手順(というか足順)の必然性が明らかになるのが0:40からのAメロのパターン。
16分の裏拍でハイハットを叩き、直後の表拍でハイハットペダルを踏むことにより、「パシュン!」という切れ味鋭い音色が裏拍に挟み込まれ、独特のアクセントになっているのです。
いやこの発想はなかった。

YouTubeで「Evolutionary Sleeper」をカバーしているドラマーの動画をいくつか見ましたが、この部分をきっちりコピーしている人はほとんどいません。
キックの連打は右足スタート、ハイハットのオープン時の開き具合はごく狭くして、クローズにすることなくごまかしているのが大半です。

まあ当然私自身もこんなもん叩けやしないんですが、派手ではないけど凄いフレーズなんだよ!というのを紹介させていただきました。
(※なお、同様の理屈によるものと思われるフレーズは1993年の1stアルバム「FOCUS」収録の「I'm But a Wave to ...」1:40~等でも聴くことができます。)

独特のセッティング

ついでに余談ですが、演奏動画を見て「ツインペダルにしてはスネアとハイハットの位置が妙に近い」という点に気づいた方もいるかもしれません。
一般的にハイハットスタンドはツインペダルの左足(スレイブペダル)のさらに左側に置きますが、彼は実は普通とは逆にスレイブペダルの右側=ツインペダルの内側にハイハットのペダルがくるようなセッティングにしていたのです(THE POLICEのStewart Copelandなんかもそうですね)。

Sean Reinertは2015年の初来日後にCYNICから離れてしまいました(見に行けて本当に良かった)。
私が行った大阪公演はプロショットのライブ映像がYouTubeに上がっていたのですが、新たにVeil of MayaのDrum Cam映像もアップされていますので、ぜひご覧ください。
私は本当にこのドラムセットの目の前だったのですが、ツーバス連打は左足スタートをデフォルトにしていたのでは?というぐらいに今回紹介した奏法を多用していました。

現在のCYNICの動向

Sean Reinert脱退後、CYNICは新ドラマーとしてMatt Lynchを迎えました。
タイプは違えど彼も多彩なフレージングが魅力的なドラマーですので、次のアルバムがどのようなものになるのか期待して待ちたいと思います。

Sean Reinertはその実力に比してあまりに知名度が低すぎる、評価が追い付いていなさすぎると感じています。
少しでも多くの方にこの記事を読んでいただけると嬉しいです。

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