先日、ふとしたきっかけで「障害者雇用 楽」で検索したところ、「障害者雇用はやめた方がいい!絶対に自立できないような安い給料でひたすら単純作業をやらされるだけだ!」的な方向性のブログ記事を目にしてしまいました。
これは人によって様々な結論がありえるテーマなので、確かにそのような考え方もあるでしょう。
しかし、障害者雇用の枠に入ることでようやく救われた感がある立場の人間としては「障害者就労は絶対NG」的な考えには賛同できないので、個人的な考えを書き残しておこうと思います。
障害者求人のイメージと実態
私は30代になってから発達障害(ASD)の診断がついた男性です。
精神障害者手帳を取得し、障害者向け転職エージェントからの紹介で今の仕事を見つけました。
職探し中は通常の求人サイトやハローワークも含め、障害者枠の求人をいろいろと探し回りました。
実際その中には、「単純作業」としか言いようのない低賃金の仕事もありました。
基本的には知的障害のある方を想定した求人であろうと思われ、その受け皿として大きな社会的意義があることは間違いないですが、その一方で「自立せず実家に頼って暮らすことを前提とした給与額」であることもまた事実でしょう。
それ以外だと、「補助業務全般」のような感じで担当業務がはっきりしない求人もあります。
これは(しいて言えば)いわゆる雑用係に近いイメージの、工場であれば資材の運搬や整理整頓、事務仕事であれば定型的なデータ入力や書類整理などのケースもありますが、実際の仕事内容には企業によってかなり差異があると聞きます。
また、転職サイトとして有名なdodaが運営している障害者向けサービスのdodaチャレンジなどでは、よく「オープンポジション」という表現が出てきます。
最初から「こういう仕事ができる人を採用したい」「こういう部署に配属する人材を探している」と決め打ちで求人を出すのではなく、「実際に面接して、良さそうな人がいれば社内に適したポジションがないか探す」という感じの求人ですが、これも「少し人手が足りない部署の一般事務」のような仕事に落ち着くケースがしばし見られるようです。
障害者向けでも給与が高い仕事は存在する
「責任がないぶん給料については高くは望まない」というのであれば、雑務的な仕事で働くのはある意味「楽な仕事」と言ってもいいのかもしれません。
ですが、障害者向けの求人はこのような(悪く言えば)専門性の低いものばかりではなく、中には一般就労と同等の給与水準が設定された障害者雇用も少ないながら存在します。
例えば、障害者転職支援サービスとして知名度の高いatGPの内部のサービスで、「atGPハイクラス」というものがあります。
私が使ったことがあるのは通常のatGPだけで、このハイクラスの方の利用経験はないのですが、ウェブサイトを見ると「年収500万円-1000万円クラスを目指す」と明言されており、(おそらく対象は知的障害・精神障害の全くない後天的な身体障害者がメインでしょうが)相応のマネジメント経験や専門性の高いスキルがあれば障害者雇用でも年収4桁万円は実在するのでしょう。
当然ながら、そのような仕事には給料に見合うだけの責任が伴いますし、障害への配慮はしてもらえても「障害者だから」という理由で手加減してもらえることは一切ないでしょう。
ただ、「座ってるだけで何もすることがない」「雑用として荒く使われる」「キャリアアップは全く望めない」という障害者向けの仕事が現存する一方で、専門職や管理職といった領域に関しては「障害者雇用の仕事は楽」というのが当てはまらないのもまた事実なのです。
私自身の就労状況
じゃあそんなお前は今何して働いてるんだ、という話なんですが、私は完全在宅のリモートワークで雇用され、主にウェブコンテンツの作成みたいなことをしています。
契約社員なので正社員ほどの安定感はありませんし、年収も200万円台ですが、現在の時短勤務からフルタイムになることができればもう少し上がるようですし、正社員登用の道も開かれています。
業務上の配慮をしてもらっているとはいえ、そこそこに難易度の高い仕事をしていると自負しています。
ネット上にある情報の嘘
しかし、最初に言及した某転職ブログの記事など、ネット上には「障害者として就職したら刺身の上にタンポポを乗せる仕事を死ぬまでやらされる」などという、煽りにしても酷すぎる内容が流布しています。
実際のところ、その手のブログはだいたい記事の作成を外注しており、同じブログ内の記事を障害のない人が書いていたり、発達障害のある人が書いていたり、それとはまた別の障害当事者が書いていたりします。
そのため、書いてある主張は記事ごとにバラバラであり、はっきり言ってそのようなブログに参考にするだけの価値があるとは思えません。
発達障害らしき症状を自認しながらも、「障害者手帳を取ったら簡単な仕事にしか就けなくなりそうで嫌だな…」と思っている当事者やその家族を見かけることは実際にあります。
ですが、障害者雇用の仕事は単純労働ばかりではありません。
狭き門ではあるものの、障害者雇用でも一般就労の仕事と同じく仕事にはかなりの幅があるのです。
「障害者手帳を取得したとしても、探せば単純作業以外にも色々な選択肢がある」ということが、手帳取得に悩む当事者の方に届けばと思います。