このブログの「影響」カテゴリーの中で、私が影響を受けたベーシストの中でもエフェクターに着目したものを「エフェクターベーシスト列伝」と称して紹介してきましたが、今回はちょっと脱線して番外編です。
私自身の趣味嗜好による個人的なメモを兼ねて、主に現代のエクストリームメタルの分野でフレットレスベースを弾いているベーシストを紹介したいと思います。
デスメタルに興味がない方にも、フレットレスのアプローチのひとつとして参考になればと思います。
なお、2024年、旧ブログからの記事移行に伴い、情報が古いままになっていた部分を大幅に改稿しました。
ついでに私の1人デスメタルプロジェクトについても掲載しましたので、趣味の合う方はぜひ聴いていってください。
- Steve Di Giorgio (DEATH etc.)
- Sean Malone (CYNIC etc.)
- Robin Zielhorst (OBSCURA, ex-CYNIC etc.)
- Jeroen Paul Thesseling (ex-PESTILENCE, OBSCURA, SADIST etc.)
- Linus Klausenitzer (OBSIDIOUS, ex-OBSCURA etc.)
- Dominic "Forest" Lapointe (FIRST FRAGMENT, ex-BEYOND CREATION etc.)
- Hugo Doyon-Karout (BEYOND CREATION, BROUGHT BY PAIN, EQUIPOISE etc.)
- 宣伝
- まだまだあるぞ世界のフレットレスエクストリームメタル
Steve Di Giorgio (DEATH etc.)
まずこの人は絶対に外せない、スティーヴ・ディジョルジオ。
SADUSをはじめ多くのバンドで活躍、TESTAMENTでもベーシストを務めています。
その強烈すぎる存在感が遺憾なく発揮されたのが、伝説的デスメタルバンドであるDEATHでしょう。
中でも「Individual Thought Patterns (1993)」はベースの音がやたらとデカく、うねりまくる独特のベースラインが迫ってくる必聴盤です。
Sean Malone (CYNIC etc.)
私が大きな影響を受けたベーシストの一人がショーン・マローンです。
CYNICはプログレッシブデスメタルの歴史における超重要バンドと言えます。
こちらは彼の演奏を生で見る最初で最後の機会となってしまった2015年の来日公演から、1stアルバム「Focus (1993)」の冒頭を飾る名曲。
CYNICは1stアルバムリリース後に一度解散し、復活した後はデスメタル要素が薄れていきますが、2ndの「Traced in Air (2008)」、3rdの「Kindly Bent to Free Us (2014)」いずれも個人的に大好きな作品です。
そして外せないのが、Roadrunner Recordsの25周年記念プロジェクト、ROADRUNNER UNITEDのアルバム「The All-Star Sessions (2005)」に収録されたこちら。
TRIVIUMのマシュー・ヒーフィー(当時19歳!)がリーダーを務めたチームに招かれ、ブラックメタル曲「Dawn of a Golden Age」に参加しています。
この曲はボーカルがダニ・フィルス(CRADLE OF FILTH)、ドラムがマイク・スミス(SUFFOCATION)というとんでもないメンバー編成が強烈な化学反応を起こしました。
なお2020年、CYNICのドラマーだったSean Reinertに続き、Sean Maloneまでもが50歳でこの世を去ってしまいました。RIP
2人のSeanの没後に制作されたアルバム「ASCENSION CODES(2021)」ではベースパートをキーボード奏者が担当し、ベーシスト不在の作品となりました。
(関連記事:CYNICについての個人的な色々↓)
Robin Zielhorst (OBSCURA, ex-CYNIC etc.)
ショーン・マローンは生前にCYNICに参加していない時期があったのですが、その際にベーシストを務めていたのがオランダのロビン・ジールホルストです。
彼はテクニカルインストバンドEXIVIOUSでの活動が著名で、必ずしもフレットレスベースばかりを演奏しているタイプではないのですが、2024年、ドイツのテクニカルデスメタルバンドOBSCURAに加入。
次回作「A Sonication」が2025年リリース予定とのことで、先行して「Silver Linings」が公開されています。
既に「フレットレスベースのテクデス」が定着しているOBSCURAにあって、ここではフレットレスを弾いているようです。
Jeroen Paul Thesseling (ex-PESTILENCE, OBSCURA, SADIST etc.)
ヨルン・パウル・テセリンは長い活動歴を誇るオランダ人ベーシストで、プログレッシブデスメタル史における最重要バンドの一角であるPESTILENCEに断続的に在籍していました。
デスメタルとシンセサウンドを融合させた一つの結実例として名高い「Spheres (1993)」において、ヌルヌルしたベースサウンドが楽曲のジャンルレス感をさらに強めています。
そんな彼を一躍有名にしたのは、間違いなくOBSCURAの2ndアルバム「Cosmogenesis (2009)」でしょう。
バンドにとっての出世作と言えるこのアルバムの冒頭を飾ったベースイントロは、ごく短いフレーズながら鮮烈な印象を残しました。
その後OBSCURAからは脱退、一度は再加入し「A Valediction (2021)」に参加したものの、その後のツアーには帯同することなく再び脱退しています。
また、OBSCURA再加入と同時期に、プログレデスメタル黎明期より活動するイタリアのバンドSADISTにも加入。
「Firescorched (2022)」にて休符を活かしたフレーズでフレットレスならではの存在感を発揮し、時に民族音楽をも想起させる独特のリズムアプローチにさらなる捻りを加えていましたが、こちらも人知れず脱退してしまいました。
Linus Klausenitzer (OBSIDIOUS, ex-OBSCURA etc.)
2011年から2020年にかけてOBSCURAに在籍したベーシストがリーヌス・クラウゼニツァーです。
5thアルバム「Diluvium (2018)」では、複雑化した楽曲の隙間を縫うようなフレーズを構築。
2020年には、OBSCURAからリーダーのシュテフェン・クンメラー(Vo,G)一人を残して一斉に脱退した他のメンバーとともにOBSIDIOUSを結成。
突進力と難解なリズムを兼ね備えたサウンドに、意表を突いたクリーンボーカルをも導入し、OBSCURAとはまた異なる音楽性を見せるアルバム「Iconic (2022)」をリリース。
さらに、多くのゲストを迎えてソロ名義のアルバム「Tulpa (2023)」もリリースするなど、精力的に活動しています。
Dominic "Forest" Lapointe (FIRST FRAGMENT, ex-BEYOND CREATION etc.)
テクニカルデスメタルにおける超絶技巧のフレットレスベーシストといえば、カナダの名手ドミニク"フォレスト"ラポイントです。
レフティの6弦を用いた流麗なテクニックをフル活用したBEYOND CREATIONの1stアルバム「The Aura (2012)」のインパクトはあまりに強烈でした。
2016年から所属しているFIRST FRAGMENTでも弾きまくっており、「Gloire Éternelle (2021)」ではスラップも多く披露しながら、バリエーションに富んだリズムの海を変幻自在に飛び回っています。これは本当に必聴。
※YouTubeのプレイ動画等から一時期勘違いしていたのですが、FIRST FRAGMENTの1stアルバム「DASEIN(2016)」で演奏したベーシストはVincent Savaryで、Dominicの加入はレコーディング後です。
Vincentのプレイ動画や他バンドでの著名な活動は見当たらないため、当記事では彼の紹介は割愛しますが、「Gloire Éternelle」収録の長尺曲「In'el」にゲスト参加しており、1:20~のベースソロのうち前半がForestで、後半1:58~がVincentのパートのようです。
Hugo Doyon-Karout (BEYOND CREATION, BROUGHT BY PAIN, EQUIPOISE etc.)
ドミニクの後任としてBEYOND CREATIONに加入したのがヒューゴ・ドイオン・カーラウトです。
一聴してそれと分かる癖の強いサウンドと確かなテクニックで、「Algorythm (2018)」のアンサンブルに彩りを与えました。
他にも、メンバーがほぼBEYOND CREATION関係者のBROUGHT BY PAINでは、EPとして「Crafted by Society (2016)」をリリース。
さらにEQUIPOISEにも参加し、1stアルバムとして「Demiurgus (2019)」をリリースしています。
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そしてこの文脈で自分自身を紹介することがずっと私の目標でした。
随分時間をかけてしまいましたが、一人バンドPHILOSODOMY名義の楽曲を2024年10月にサブスク配信でリリースしました。
今まだこの一曲だけですが、趣味の合う方はぜひ聴いてください。
中盤のベースソロには自分なりにSean Maloneへのリスペクトを込めました。
まだまだあるぞ世界のフレットレスエクストリームメタル
というわけで既にけっこう長い記事になってしまいましたが、メインでフレットレスを使っているわけではないベーシストもたくさんいる、というか普通はそうなわけです。
先に一度登場したイタリアのSADISTも厳密には「フレットレスのデスメタル」という感じではないのですが、長年ベーシストの座にあったAndy Marchiniも一部の作品でフレットレスベースをプレイしており、「Hyaena (2015)」等でそのサウンドを聴くことができます。
OBSCURAに正式加入はしていないものの、一時的にツアーでサポートを務めていたのがEXISTのAlex Weberです。
彼の奏法は、昨今のテクニカルベーシストにしばし見られるコンパクトな動きで音数を増やすのにロータリースラップ的なアップダウンの動きを活用するというもので、OBSCURA本来のサウンドと比較すると「モダンメタル的な音色・プレイスタイルでフレットレスを演奏するとこうなる」という好例でしょう。
余談ですが、彼が弾いているベース、なんと自作品だそうです。
あるいは「フレットレスのベーシストが一時的にだけ在籍していた」というパターンもありますし、世界は広いというか個人単位で大々的に名前を出して活動しているわけではないフレットレス巧者のベーシストは本当にそこら中におり、まだまだたくさんのフレットレスデスメタル/エクストリームメタルが存在します。
SPECTRUM OF DELUSIONやHYPERCONVOLUTORでベースを弾いているJerry Kamerなんかは技術に比して知名度が低いと感じるベーシストの一人です。
国産勢として、スラッシュメタルバンドSTRAENGE。
突進リフとVOIVODやVEKTORを彷彿とさせる複雑怪奇な展開が同居する楽曲には独特の中毒性があります。
初のフルアルバムとして「Filthy Microbus (2023)」をリリース。いやーかっこいい。
国産テクデスSomnium de Lycorisはスゲー!となったけど解散しちゃいましたね…
PILE OF PRIESTSはアメリカのデスメタルバンド。
微妙にまとまりきっていない雰囲気も感じてしまうものの、時折コード弾きも交えて存在感を主張するベース等、ところどころにDEATH的な要素もありますね。
メキシコにもフレットレスデスメタル、FRACTAL ENTROPY。
90年代っぽさを感じさせる荒々しさとテクニカルな音使いが同居した楽曲に、フレットレスベースが絶妙なアクセントを添えています。
中央アメリカからはCORPSE GARDEN、コスタリカのバンド。
個人的にこのアルバムは大好きでしたが、その後ベーシストが交代、音楽性も変わってしまいました。
少し前に来日していた中国のDEATHPACTもベースがフレットレス。
こちらはイタリアのCOEXISTENCE、全員ヘッドレスなのいいな。
CHILIASMはヨーロッパの多国籍バンド。
ベースソロも登場するTÓMARÚM、これは分類としてはアトモスフェリックブラックメタルに近いものでしょうか。
かっちりしたテクデスとはまた異なる魅力があるデスメタル、HORRENDOUS。
スペインのVIRULENCY、フレットレスでブルータルデスメタル!
こうした多数のフレットレスデスメタルがある一方、海外のフォーラムで「フレットレスのデスメタルだぜ!」と紹介されていても、「これは違うのでは?」というものがあったりもします。
例えばJoel Schwallierが在籍していた時期のINFERI、フレットレスでのプレイスルー動画も上がっているのですが、音源を実際にフレットレスでレコーディングしているのかはいまいち確証が持てません。
VOIDCEREMONYは、これ↓なんかはフレットレスっぽいですが、全曲フレットレスか?というとちょっと分からないです。
VERVUMなんかもその手の話題でよく挙げられていますが、これは違うでしょ…?
実際、Arran McSporran本人によるプレイスルーもフレッテッドです。
ArranはVIPASSIでは実際にフレットレスを弾いているんですが、これはテクデスっぽいインストゥルメンタルなんだよな。
DEVILOOFは最近のライブ映像等を見るとDingwallを使っているんですよね。7弦フレットレスは…?
とまあこんな感じで情報を掘っていけばキリがなく、インターネットがいくら発展しようと真偽が分からないこともあります。
この記事は今後も適宜加筆訂正することがあるかもしれません。