人生初のサブスク配信が無事完了しました。
シングル「Human Cattle Dignity」、各種音楽サブスクリプションサービスにて配信中ですのでお聴きいただけると嬉しいのですが、DTM初心者としての目線で「ここはもっとこうすべきだったな」という反省点が多々あるのも事実です。
既に世の中に出回っているTipsも多分に含まれるとは思いますし、冷静に考えれば「当たり前だろ」という話も多いのですが、この記事では「やってみて初めて気付いた注意点・次回への改善点」をまとめますので、私と同じようなDTM初心者の方が同じ失敗をしないよう参考にしていただければ幸いです。
初めに簡単な解説
まず、前提条件の説明として、今回リリースした楽曲について軽く触れておきます。
ドラムパートはパソコン上でいわゆる「打ち込み」で作成しましたが、それ以外のボーカル、ギター、ベースは全て自分で演奏しました。
(※ゆっくり弾いてテンポを上げるタイムストレッチ、細かいフレーズごとに区切って録音したものを切り貼りするパンチイン・パンチアウトといったセコ技は多用しています。)
最終的なミキシング、マスタリング(と呼べるほどのものなのか分からないですが)まで自身で行いました。
サブスクへの配信はディストリビューターのROUTER.FMを通じて一括で行っています。
余談ですがタイトル及び歌詞の着想元は「家畜人ヤプー」です。
Aメロ冒頭のリフの着想元はアストル・ピアソラです。
打ち込みのドラムは後から修正すればいい
今回私がリリースした音源は、ボーカル・ギター・ベース・ドラムというロックバンドの定番的な楽器編成です。
実際のバンドでキーボーディストが担当するようなストリングスやシンセ系の音は使っていません。
レコーディングは大まかには ①ドラム→②ギター(バッキング)→③ベース→④ギターソロ(&ベースソロ)→⑤最後にボーカル
という順番で行いました。
で、一発目から「そんなのやる前から分かっとけよ」の極みなのですが、打ち込みで作るパートって後からいくらでも修正が効くので、ドラムのフレーズを打ち込みながら各太鼓のピッチとか全体の音量バランスとかを細かく微調整しても意味がないんですよね。
初手で音色をある程度作り込んでおくのを無駄とまでは言わないにせよ、「デスメタルでブラストビートも多いし、スネアのピッチはもう少し高めかな」とか、「なんかシンバルが小さい気がするな?ミキサーでトップのマイクを少し上げておこう」とか、そんなのは全パート録音し終わってから最終段階でやればいいことなわけです。
私自身、作業を進める中でドラムの音作りが迷子になってしまい、「大した知識もないのだから、一旦プリセットの音そのままで曲の完成まで進めて、細かい調整は最後にまとめてやるべきだった」と反省しました。
ギターやベースのエフェクトはプラグインに任せればいい
計画の当初、私は音作りをマルチエフェクターで行い、マルチエフェクターのアウトプットからオーディオインターフェースに入力する、いわゆる「かけ録り」の手法でレコーディングしようと思っていました。
「自前のノートパソコンがいくぶん古く、だいぶ動作が怪しい」というのが大きな理由です。
パソコンになるべく負荷をかけず、その負荷をエフェクター実機に肩代わりしてもらおうと考えたのです。
しかし、この構想についてはX(Twitter)上で多くの方から「それはやめた方がいい」との助言をいただきました。
実際、結果的にエフェクトやアンプはプラグインで済ませて大正解だったと思っています。
先に音を作り込んだ状態でレコーディングしてしまうと、「全パート混ざった時にちょっとギターが歪み過ぎだと感じるな」と思ってもギターの歪みを弱くするような処理ができないわけです。
仮に宅録でかけ録りをやるとしても、実機エフェクターで繋ぐのはコンプレッサーぐらいではないかと今は思います。
ちなみに、当初パソコンの動作が重かった問題については、心霊スポットの画像などを含む不要なファイルを片っ端から削除したことでかなり安定しました。
何が悪さしてたんでしょうね。
ボーカル録りはスタジオに行った方がいい
私は奈良県の香芝市というところに住んでいるのですが、ここに移り住んだ当初は近場に音楽スタジオがなく、それもあって今回のボーカル録音をどうするかが一つの課題でした。
集合住宅住まいなので、自宅でボーカルを録るのは厳しいです。
まずは自分の車にマイクやオーディオインターフェース、ノートパソコンを一式持ち込んで録音するというのを試したのですが、まだ夏場だったこともありエアコンが必須で、車のエンジン音とエアコンの音が気になります。
広さも足りないので姿勢にかなり無理があり、長時間の作業は不可能でした。
じゃあカラオケはどうだろう?と思ったのですが、これまた隣の部屋の人の歌が思いっきり入ってしまい失敗。
やはりボーカルや生楽器の録音には静かな環境が不可欠だと痛感しました。
仕方ないのでちょっと遠くてもスタジオに行くか、と思って調べてみたところ、知らないうちに市内にスタジオができていたので、今回はそちらを利用させていただきました。
Forte music studioさんです。
カラオケの時と同様に機材は全部持ち込みで、防音環境だけを借りに行ったような感じですが、録音場所をスタジオに変えただけで録り音のクリアさは別物レベルに良くなりました。
余談ですがこちらのスタジオにはなんとアップライトピアノが置いてあり、ある意味ロックバンド向けではなさそうでしたが、綺麗でとでも快適でした。
吐き捨て系のデス声は録り音が全て
これは発声方法とか声質によるのかもしれませんが、自分の場合、結論から言うと「デス声はエフェクトを駆使してそれらしく聞かせるつもりだったのに、実際には加工はほぼ不可能」でした。
そもそも私が目指した方向性としては、グロウルと呼ばれる発声法で、「ドスの効いたデスボイス」がやりたいという目標がありました。
ただ、グロウルの真似事を含む色々な発生方法で録音してみた結果、どれもなんかイマイチで、一番マシに聞こえた吐き捨て唱法を採用したという経緯があります。
また、私は当初、「どうせ自分の声はしょぼいだろうし、ピッチシフトをかけて音程を低くしたり、歪みやアンシミュで声を歪ませたりしてやろう」と目論んでいました。
ところが、吐き捨てデスボイスと加工系のエフェクトは相性が悪いのか、歪ませてもピッチを下げても音を重ねても全然いい感じにならないのです。
結果として、今回のリリースではボーカルパートが一番の心残りとなってしまいました。
これなら「地声成分多めの唱法で録音し、ピッチを下げたり歪ませたりして加工する」というズルい方法の方が理想に近い仕上がりになった可能性もあります。
次回はその方向で試してみたいと思っています。
ローカットは本当にいらない
これは使っているアンシミュやドラム音源によって当然異なると思うので、あくまで私の場合ですが、ローカットどころかブーストすべきだったと思います。
マスタリング時には「こんなもんかな」と思っていたのが、実際に同ジャンルの配信音源と比較して聴いてみると、明らかにローがカスカスです。
私は各パートでも全体のミックスでも低音を削るようなことは全然していないのですが、それでも思ったより軽い、タイトと呼ぶよりも太さが足りない音になってしまったというのが正直な感想です。
次回はもっと(誤解を恐れず言えば、音の分離が悪くなることと引き換えにしてでも)もっと低音モリモリにしてやろうと思います。
既存の作品をジャケットに用いる場合は著作権者に確認を
2024年の夏ごろに、女性の開腹というか脊椎をモチーフにした醤油皿がXでバズり、その後なぜか女性蔑視的な方向で炎上してしまっていたのをご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
私はこの山下昇平氏が個展で京都に来られた際にギャラリーに出向き、いくつかあった中で気に入ったこの小皿を実際に購入しました。
そのお皿にセブンイレブンのもやしナムルを盛りつけ、モノクロにして画像加工したのがジャケットの画像です。
このジャケットについては、ちゃんと山下氏の許諾をいただいています。
お金を払って購入した作品であっても、著作権は作者に帰属したままです。
商用利用するには、事前に作者の許可を得る必要がある点に注意しなければなりません。
「ジャケットデザイン用に書き下ろしてもらった」というケースでもない限り、他者の著作物を自主制作音源のジャケットや同人誌の表紙にしたい場合は、必ず作者に確認しましょう。
他にも何か思い出したら書きますが、意外と考えることが多いというのが正直な感想です。
最初からアルバムを作ろうとするようなことをせず、1曲のみからスタートして正解だったと思います。